マスカスタマイゼーションを実現するツールとして期待された3Dプリンター(付加製造装置)。しかし、材料、精度、造形可能な大きさなどの制約もあり、国内ではなかなか試作や個人の趣味の範囲を超えた活用が進んでいない。一方、海外では欧米を中心に工業用の製造装置としての利用が進む。3Dプリンター技術も進化を遂げ、高機能化している。国内外の先進的な活用例を紹介すると共に、欧米に比べて3Dプリンターの普及が遅れる日本の課題に迫る。

日本でも飛躍するか3Dプリンター
目次
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この10年で用途くっきり3Dプリンター、国内外で広がる最終製品への適用
「10年前と異なり、近年はユーザーの用途が明確化している」─。3Dプリンター〔付加製造(AM)装置〕の業界関係者は異口同音にこう語る。3Dプリンターが世の中に広く知れ渡ったのは約10年前。当時は個人のホビー用途や試作向けが主な用途だった。
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5台の金属3Dプリンター使いこなす中小企業、航空や半導体で事業拡大
金属加工メーカーの東金属産業(静岡県沼津市)が金属3Dプリンターを活用し、ものづくりの付加価値を高めようとしている。同社は2014年に初めて3Dプリンターを導入し、2023年時点で5台が稼働している。3Dプリンターでしか造れない形状がもたらす機能などが評価され、造形品は既に航空や産業機械分野の実製…
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工業用3DプリンターのExtraBold、工作機械にプリントヘッド後付け構想も
ExtraBold(エクストラボールド、東京・豊島)は、「製造業に入り込める」ことにこだわった3Dプリンター(付加製造装置)開発をしている。「製造業に入り込める」とは、日本企業が求める工業製品を造れる性能と品質、安定性を備えていることを意味する。2021年9月には「工業用グレード」(同社)の3Dプ…
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「次の4番バッター育てる」、中小企業が金属3DプリンターでEV市場開拓へ
大型の金属加工を手掛ける大丸鐵興(茨城県境町)は主力製品の売り上げ減少が見込まれる中、新たな事業を育てるべく2022年に金属3Dプリンターを導入した。まずは既存顧客に、各社の事業との関連性が高い造形サンプルを見せて、金属3Dプリンターを使う利点をアピールする。2027年をめどに3Dプリンター関連事…
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金属3Dプリンターで金型補修、リードタイム9割減・金型寿命3倍
金型メーカーのフジ(埼玉県川口市)が金属3Dプリンターで金型を補修する提案を始めた。損傷した部分に金属を積層造形し、切削加工で仕上げる。従来のTIG溶接による補修と比べると熱疲労を抑えられるため、金型寿命を3倍に延ばせるという。実際に自動車関連メーカーの金型を3Dプリンターで補修し、実生産で問題な…
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3Dプリンターをロストワックスに、開発期間半減や部品一体化で事業展開
金属材料の販売や金属部品の設計協力・加工を手掛ける技術商社の花岡金属(東京・千代田)は、樹脂系3Dプリンターで鋳造法の一種である「ロストワックス」の原型を造る提案を始めた。手のひらサイズの原型なら製作にかかる時間はたったの約1時間。さまざまな形状の鋳造品を手軽に試作できるため、開発期間を従来の半分…