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 DX推進のニーズが高まるなか、より高度な「データ活用」が求められてきた。より多くのデータを集め、より速く、より入念に分析するには、最新のツールやサービスの活用が欠かせない。データ活用のための「新3種の神器」ともいえる「オブジェクトストレージ」「データ仮想化ツール」「データ連係クラウド」について、その機能や活用法を解説する。今回はオブジェクトストレージを取り上げる。

 ここ数年、データ活用の分野でクローズアップされているキーワードが「データレイク」である。その解釈に幅はあるものの、社内や社外から多種多様なデータをあらかじめ集めておき、ニーズに応じて素早くユーザーに提供するコンセプトだ。

 そうした用途に向けて大量のデータをより安価に格納できるストレージが求められてきた。選択肢の一番手に挙げられるのがオブジェクトストレージである。

 一意のキーに対応する形でオブジェクト(データ)を格納し、アプリからはHTTP/HTTPSでアクセスする。現在多くのユーザーが利用するのが、クラウドが提供するオブジェクトストレージサービスである。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどのメガクラウドを中心に多くのサービスがあり、データ容量やアクセス数などに基づいた従量課金で使える。

 その中でもAWSの「Amazon S3(Amazon Simple Storage Service)」は代表格といえる。2006年の提供開始以来、いまだ進化を続け、ユーザーも多い。例えば東京海上日動火災保険は、S3を使ってAWS上にデータレイクを構築し、データ活用基盤を整えている。

 Amazon S3を中心に、オブジェクトストレージの最新動向を見ていこう。

「強力な整合性」をサポート

 AWSでは、複数の「AZ(アベイラビリティーゾーン)」を束ねて「リージョン」を構成する。AZはデータセンター群ととらえればよい。Amazon S3は基本的に3つ以上のAZにまたがる形で構成し、可用性を高めている。

Amzon S3のストレージクラス
Amzon S3のストレージクラス
(出所:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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 最近の機能強化の1つに「強力な整合性」のサポートがある。アマゾン ウェブ サービス ジャパン 技術統括本部技術推進グループの小林正人本部長は「従来は、ある程度時間が経過するとデータが最新化される『結果整合性』を担保していたが、今は強力な整合性を保証している」と話す。

 Amazon S3の活用に当たっては、7つあるストレージクラスをどう使い分けるかがポイントである。クラスによって格納されたデータにアクセスする際のレイテンシー(遅延)やストレージ単価が異なる。Amazon S3の利用料金は、データ容量やリクエスト数、データ転送量などで決まるので、データの利用特性を見極めて最適なクラスに配置したい。