DX推進のニーズが高まるなか、より高度な「データ活用」が求められてきた。より多くのデータを集め、より速く、より入念に分析するには、最新のツールやサービスの活用が欠かせない。データ活用のための「新3種の神器」ともいえる「オブジェクトストレージ」「データ仮想化ツール」「データ連係クラウド」について、その機能や活用法を解説する。今回はデータ連係クラウドを取り上げる。
クラウドの活用が進むにつれて、複数のクラウド間でデータ連係したいというニーズが高まってきた。あるクラウド上に蓄積したデータを別のクラウドで分析したり、あるクラウドで処理が終わったら後続処理を別のクラウドにデータを引き継いだりといったユースケースだ。
こうした連係をGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上で簡単に設定し、クラウド―クラウド間、クラウド―オンプレミス環境間でアプリケーションやサービスを仲介するのが「データ連係クラウド」である。特に、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の機能が充実するなか、SaaSをうまく組み込んで業務を進める用途などで出番が増えつつある。
例えば2022年4月に基幹系システムを刷新した商船三井。会計・財務部分に「SAP S/4HANA Cloud」、海運業務に米Veson Nautical(ベソン・ノーティカル)の「Veson IMOS Platform(VIP)」を採用した。営業業務オペレーションデータはVIPに、財務会計データをSAPにそれぞれ集約。両者を連係させるために米Informatica(インフォマティカ)のデータ連係クラウド「Informatica Intelligent Cloud Services(IICS)」を採用した。
データ連係クラウドの機能や利用上の注意点などを見ていこう。
ノーコード/ローコードで連係処理
セゾン情報システムズは、既存のデータ連係ツール「DataSpider Servista」をクラウドサービス「DataSpider Cloud」としても提供している。Amazon Web Services(AWS)上で稼働させたDataSpider Servistaをユーザーはサービスとして利用できる。
DataSpider ServistaはETL〔Extract(抽出)、Transform(変換)、Load(書き出し)〕をベースにしたデータ連係機能を備える。データベースやデータウエアハウス(DWH)といったデータソースに接続するために各種アダプターをあらかじめ備える。従来は個別にシステム間の連係機能を開発していたような環境で、DataSpider Servistaはアダプターを介して連係関係を設定し一元管理する。
接続アダプターを介した連係処理の開発に当たり専門知識は不要という。セゾン情報システムズ マーケティング部プロダクトマーケティングマネージャの細見征司氏は「GUI上でデータソースを指定し、演算や統合といった処理を選択するだけ。ノーコード/ローコードで連係処理を実現できる」と説明する。
アダプターは、AWSやMicrosoft Azure、Google Cloud、Salesforceなどのクラウド向けも豊富だ。例えばAWS向けは「Amazon Aurora」「Amazon DynamoDB」「Amazon Redshift」「Amazon S3」などに接続するためのアダプターを用意する。