「患者は医療機関に行かなければいけないという常識を打ち破りたい」〔遠隔医療用機器を手掛ける米MedWand Solutions最高経営責任者(CEO)のRobert Rose氏〕――。テクノロジー見本市「CES 2023」(2023年1月5~8日、米国ラスベガス)のデジタルヘルス関連会場の至る所で目についたのが「Telehealth(遠隔医療)」という言葉だ。遠隔医療を補助する目的で、様々な企業が生体データを自宅で取得するデバイスを発表していた。
米国では、新型コロナウイルス感染症の拡大でオンライン診療など遠隔医療の普及が進んだ。しかし、遠隔医療で得られる患者の情報は対面診療と比較して限定的な場合が多い。自宅で生体データを取得して医師と共有できれば、遠隔医療の質向上が期待できる。加えて、医療機関以外での生体データの取得は受診前後の状態把握を可能とし、不調の早期発見や退院後の経過観察にも役立つ。
皮膚に貼り付けるパッチ型デバイスで遠隔モニタリング
米BioIntelliSenseはCES 2023で、鎖骨の下付近に貼って生体データを取得できるパッチ型のデバイス「BioButton」を展示した。BioButtonは、皮膚温度や呼吸数、心拍数のバイタルサインを継続的にモニタリングできる医療グレードのウエアラブル端末だ。医師が退院後の患者を遠隔でモニタリングする際などに利用できる。最大16日間の連続使用が可能で、充電すれば繰り返し使える。
日常生活の中で手軽に生体データを取得できるデバイスには、医療分野の大手企業も注目している。医療機器大手のアイルランドMedtronicは2022年8月、BioButtonの米国での独占的な販売権を取得。Medtronicによれば、遠隔での患者モニタリングが容易になれば、臨床現場の人材不足の課題解決にもつながるという。
オンライン診療を受ける際に使うことを念頭に開発されたデバイスもあった。米MedWand Solutionsが手掛ける小型の医療機器「MedWand」だ。複数の生体データをたった1台で取得し、測定したデータを遠隔の医師と共有できる。同社は米食品医薬品局(FDA)による認可を受け、2022年8月からMedWandの販売を始めたところだ。
MedWandは深部体温や血中酸素飽和度、脈拍などの複数の生体データを測定できるほか、聴診器の機能を持つ。さらに、耳や咽頭、皮膚の画像を取得できるカメラも搭載している。こうした多機能を持ちながら質量は170g未満で、片手で楽々と持てる。外形寸法は長さが約11.5cm、幅が約5cm、高さが約6cm。普段は救急箱の中にしまっておき、オンライン診療の際に箱から持ち出すといった使い方ができそうだ。