米ネバダ州のラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)や複数のホテルなどを会場にして開催される超巨大テクノロジー見本市「CES」。そのCESで、ヘルスケア分野や医療分野の課題を様々なデジタル技術で解決する「デジタルヘルス」の存在感が増している。
新型コロナウイルス感染症の拡大前からCESに足を運んできたヘルスケア関連の日本企業の参加者から、驚きの声が上がるほどの盛況ぶりだ。今回、2023年1月5~8日に開催されたCES2023では、自分の健康状態を手軽に確認してTelehealth(遠隔医療)を支援する技術や、嗅覚を含めた五感を活用してヘルスケアに生かす技術などが注目を集めた。
メイン会場に進出の「デジタルヘルス」
存在感が増す兆しは前回CES2022からあった。医療機器などを手掛ける米Abbottが、ヘルスケア企業として初めて基調講演に登場して話題となったのだ。今回のCES2023では本格的に出展企業や来場者が復活し、デジタルヘルス関連の展示スペースも拡充された。
デジタルヘルス関連の展示は従来、スタートアップの発表が比較的多いベネチアン・コンベンション&エキスポセンターの会場に集まっていたという。同会場はCESのメイン会場といえるLVCCから2.5kmほど離れた場所にある。しかしCES2023では従来の会場に加えて、自動車やAI(人工知能)関連などが集まるLVCCにも進出。LVCCを構成するホールの1つであるNorth Hallの一角に、デジタルヘルスのゾーンが設けられた。
CES2023公式アプリによると、デジタルヘルス関連の出展企業や団体は467に及んだ。スタートアップやスポンサータイプといった大きな分類を除くと、最も多い出展企業や団体のカテゴリーは「IoT/センサー」で632社。これに「AI」の581社、「スマートホームと電化製品」の541社、「車両技術」の514社、そしてデジタルヘルスが続く。デジタルヘルスは、出展企業のカテゴリーとして一大勢力となりつつあるのだ。
CES2023におけるデジタルヘルス関連の展示について、今回初めて参加したという医療・ヘルスケア関連の日本企業の参加者は「10年後の未来の姿があるというよりは、より近い将来を映す発表が多い印象だった」と話す。展示内容は多岐にわたるが、(1)日常生活の中で手軽に実施できる健康の維持、(2)遠隔医療を支援する生体データの測定、(3)視覚と聴覚、嗅覚などの五感を活用したヘルスケアや治療という3つのトピックが見て取れた。
自宅で不調を早期発見
日常生活の中で手軽に実施できる健康の維持としては、特に不調の早期発見を目的とした機器の展示が目立った。例えば、自宅のトイレに専用のシステムを取り付けて尿検査を実施するスマートトイレが参加者の関心を集めていた。また、呼気を吹き込むとウイルスが含まれるかどうかを確認できるデバイスといった新しい検査方法を提案する企業もあった。
数年前から開発が活況なスリープテックの展示も多かった。睡眠状態を把握し、健康維持に生かすものだ。米国のスタートアップSomalyticsが発表したのが、眼球の運動から睡眠状態を把握するアイマスク「SomaSleep」だ。装着のしやすさを保ちつつ、眼球運動に着目して睡眠状態を把握する精度の向上を目指す。
スマートフォン(スマホ)を使って簡単に健康維持を目指すシステムの展示もあった。サントリーグローバルイノベーションセンター(東京・港)が発表したスマホアプリの「GutNote」(ガットノート、仮称)は、スマホのマイクで捉えた腸のぜん動運動の音を解析し、腸の状態を評価する。