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 デバイスに息を吹き込むと、60秒で呼気中にウイルスが含まれているかどうかが分かる――。テクノロジー見本市「CES 2023」(2023年1月5~8日、米国ラスベガス)で米Opteev Technologies(以下Opteev)の担当者が手にしていたのは、指で挟んで支えられるほどの小型・軽量なデバイスだ。現在、米食品医薬品局(FDA)からの承認取得を目指し、米国とインドで臨床試験を実施している段階だという。

米Opteev Technologiesが開発中の呼気分析デバイス「ViraWarn」
米Opteev Technologiesが開発中の呼気分析デバイス「ViraWarn」
デバイスに息を吹き込むと60秒ほどで判定結果を表示する。(写真:日経クロステック)
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 CES 2023におけるデジタルヘルス関連の展示では、自宅など日常生活の中で簡単に健康状態を確認できる技術の展示が目立った。冒頭で紹介したOpteevの呼気分析デバイス「ViraWarn」もその1つだ。これ以外にも、尿検査機能を付加したトイレや睡眠状態を把握できるアイマスク、音で腸の状態を評価するスマホアプリなどが展示されていた。個人が手軽に健康状態を確認できるようになれば、異常の早期発見につながる。

ウイルスの存在を電気抵抗の変化で検出

 Opteevは機械や産業用センサーメーカーである米Novatecの子会社として2020年に発足。独自開発のバイオセンサーを応用してViraWarnを製品化した。ViraWarnは以下のような仕組みでウイルスを検出する。

 ViraWarn内で呼気が通過する流路の途中には導電性バイオセンサーを配置してある。呼気にウイルスが含まれている場合は、このセンサーにウイルスが接触して付着。ウイルスは表面に電荷を帯びているためセンサーの電気抵抗率が変化する。その変化をAI(人工知能)で解析し、呼気中にウイルスが含まれるかどうかを判定するという仕組みだ。

 陽性であれば本体のLEDライトが赤色に、陰性であれば緑色に点灯する。なお、導電性バイオセンサーの下流側にはHEPAフィルターを設置し、ウイルスが排出されるのを防ぐ。また、センサーやフィルターはカートリッジ化されており、交換可能としている。1日複数回ウイルスチェックを実施すると、カートリッジは月に2回ほど交換することになるという。

呼気分析デバイス「ViraWarn」の構造
呼気分析デバイス「ViraWarn」の構造
ウイルスがデバイス中のセンサーに接触した際の電気抵抗率の変化を解析し、呼気中にウイルスが含まれるかどうかを判定する。(Opteev Technologiesの資料を基に日経クロステックが作成)
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 検出したウイルスの種類は判別できないが、新型コロナウイルスのほかにもインフルエンザウイルスや子供がかかりやすいRSウイルスなどのスクリーニングに利用できるとしている。また同社によれば、ウイルスがセンサーに接触した際の電気抵抗率はウイルス変異の影響を受けないため、変異株が出現しても検出可能だという。

 こうしたデバイスでウイルスチェックができるようになれば、「気兼ねなく親族の高齢者をハグできる」とOpteevの担当者は話す。普及させるため、デバイスやカートリッジの価格も抑える方針だ。「カートリッジは数米ドル、デバイス本体は付属するカートリッジの数に応じて50~99米ドルほどで販売する予定」(同担当者)としている。