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 クラウドサービスを使い、サーバーレスでプログラムコードを実行する「FaaS(ファンクション・アズ・ア・サービス)」を構築する企業が相次いでいる。AWS Lambda(ラムダ)に代表されるFaaS基盤のクラウドサービスを利用すれば、開発者は仮想マシンやコンテナなどの実行環境を構築・管理する必要がなくなり、開発のスピードアップに寄与する。コードの実行が終わると必要に応じてITリソースを解放する仕組みなので料金が比較的安く、コスト削減にもつながる。

 FaaSの構築はDX(デジタル変革)に向けたシステム開発・改善のスピード向上や、クラウドコスト削減などに欠かせない。SBI生命保険はFaaSによってETL(抽出/変換/ロード)を実装しデータウエアハウス(DWH)システムを構築した。DWHプロジェクトの軌跡を見ていこう。

管理コストや作業負荷をFaaSで解消

 「経営の意思決定に必要なデータや分析処理を素早く提供したい」――。SBI生命の池⼭徹取締役兼執⾏役員(情報システム部担当)はDWH構築の目的をこのように説明する。このDWHは社内利用者向けのデータ分析用だ。オンプレミス環境やクラウド環境に点在していたデータをデータレイクに集約し、課や部署ごとに必要なデータを提供する。2022年6月に開発を始めた。

構築したDWHのシステムを一部抜粋
構築したDWHのシステムを一部抜粋
(SBI生命保険の資料を基に日経クロステックが作成)
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 DWHシステムのうちETLの大部分を、AWS LambdaによるFaaSとして実装した。SBI生命の狩野泰隆情報システム部部長代行は「FaaSであればサーバー構築などの作業を省ける。システム開発のスピードを向上し、限られた人材で運用するには適していた」と説明する。FaaSにすることによって、これまでインフラ構築に必要だった人的リソースをビジネスロジックやシステム設計などに割り当てられるようになるわけだ。

 DWH構築に当たって、まずオンプレミス環境の業務システムなどからデータをオブジェクトストレージのAmazon S3で構築したデータレイクへと移行。それをETLサービスのAmazon Glueを使って処理し、データベースサービスのAmazon Auroraに格納した。業務システムからS3に格納したデータはそのままでは分析には使いづらい。そこでGlueによって使いやすい形にしてAuroraに格納することにした。

 ただし「業務用Aurora」に直接アクセスする仕組みでは、セキュリティーの課題が生じる。そこでNoSQLデータベースのAmazon DynamoDBやDWHサービスのAmazon Redshiftを導入し、分析用基盤を構築。Glueによって業務用Auroraから必要なデータだけを抽出・加工し、分析基盤にデータを格納できるようにした。併せてコールセンターのシステムをクラウド上に構築。コールセンターシステムなどからのデータを、API GatewayとAWS Lambdaを介して抽出・加工し、業務用Auroraに格納できるようにした。