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 米Google(グーグル)や米Meta(メタ)などの「GAFAM」を筆頭とするビッグテック(超巨大IT企業)が転機にさしかかっている。2022年10~12月期決算はGAFAMが5社そろって最終減益となった。景気減速だけによるものなのか、それとも稼ぐ力自体が弱まって「成長神話」が崩壊する兆しなのか。

 この状態が今後も続くとは思っていないが、以前のような状態に戻るとも思っていない──。米Meta(メタ、旧Facebook)のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、同社の現況を印象的な言葉で表現した。米国時間2023年2月1日に開いた2022年10~12月期決算の説明会での一言だ。

 「以前のような状態」とは、同社が創業から20年弱に渡って記録してきた年率2~3割の急成長を指す。ザッカーバーグCEOは「私たちは今、異なる環境にいる」とも発言した。これまでの決算説明会ではみられなかったコメントだ。

 2023年2月はじめに出そろった2022年10~12月期のGAFAMの業績は、5社そろって最終減益となった。新型コロナウイルス禍によるデジタルサービスの需要急拡大からの反動や景気減速の影響が色濃いが、ザッカーバーグCEOが言うような構造的な変化、あるいは元に戻れない塑性的な変化は他社にもみられるのか。5社の業績を図解し、稼ぐ力の変調をみていく。

Meta──3四半期減益も株価は上昇

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 メタが発表した2022年10~12月期の売上高は前年同期比4.5%減の321億6500万ドル(約4兆1500億円)。市場予想は上回ったものの、減収は3四半期連続となった。1株当たり利益は1.76ドルと前年同期比で半減。市場予想を下回った。純利益は前年同期比54.8%減の46億5200万ドルだった。

 主力である広告売上高は前年同期比4.2%減の312億5400万ドル。景気後退による広告需要の低迷が如実に表れた格好だ。

 次代の主力と位置付けるメタバース事業では、担当部門であるリアリティー・ラボの売上高が前年同期比17.1%減の7億2700万ドルにとどまり、営業損失は前年同期の33億400万ドルから42億7900万ドルに拡大した。

 一方で、SNS(交流サイト)のFacebookの月間利用者は29億6300万人、Instagramなどを含めた同社のアプリケーション全体の月間利用者は37億4000万人となり、それぞれ過去最高を記録した。

 同社は決算発表の当日に400億ドルの自社株買いを公表。売上高が市場予想を上回ったこともあいまって、同社の株価は時間外取引で一時19%上昇した。

 同社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は決算説明会で、2023年の経営テーマとして「効率化」を掲げた。同社は2022年11月に1万1000人のレイオフ(一時解雇)を発表。ザッカーバーグCEOは効率化について、「それ(レイオフの発表)以来、追加的なステップを踏んだ」と説明した。設備投資を精査したほか、組織構造をフラットにして中間管理職の層を撤廃。迅速な意思決定を可能にしたという。さらに、現在ではAI(人工知能)ツールを導入してエンジニアの生産性向上に取り組む。

 フィリップキャピタルのアナリストであるジョナサン・ウー氏はリポートで、これらの効率化策について「経費の削減が見込まれ、減少する利益率に当面の猶予を与えることができるだろう」と分析した。

 効率化の一方で、重点分野についてはザッカーバーグCEOが「優先順位は変わっていない。現在はAI、長期的にはメタバースだ」と強調した。

Alphabet──深まるYouTube不振

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 グーグルの持ち株会社であるアルファベットの2022年10~12月期の売上高は前年同期比0.9%増の760億4800万ドル(約9兆7900億円)だったものの、純利益は同34.0%減の136億2400万ドルに落ち込んだ。減益は4四半期連続となる。1株当たり利益は1.05ドル(前年同期は1.53ドル)だった。いずれも市場予想を下回り、同社の株価は時間外取引で一時6%下落した。

 アルファベットのスンダー・ピチャイCEOは決算説明会で「(新型コロナウイルスの)パンデミック後にデジタル支出が大幅に加速した後、マクロ経済情勢が厳しくなっていることは明らかだ」との現状認識を示した。

 セグメント別では、広告収益の落ち込みが顕著だ。主力であるインターネット広告事業の売上高は590億4200万ドルで前年同期比3.6%減った。

 そのうち、インターネット検索と連動する広告は前年同期比1.6%減の426億400万ドルだった。特に落ち込みが激しいのがYouTube広告だ。同7.8%減の79億6300万ドルにとどまり、2四半期連続の減収だった。

 同社は3年前の2019年10~12月期からYouTubeの四半期売上高を開示したが、減収となったのは2022年7~9月期が初めて。アルファベットの広告事業にとって成長ドライバーだったYouTubeが、この半年で変調を来していることになる。

 グーグルのフィリップ・シンドラーCBO(最高事業責任者)はYouTubeについて「2022年10~12月期に逆風が吹いた」としながらも、スマートフォンに特化した短時間動画であるYouTubeショートの拡大やスマートテレビ向けサービスの強化、定額制サービスへの投資などによって、「長期的な展望に自信を持っている」と述べた。

 ピチャイCEOは決算説明会で、「AIがもたらす便益」と「投資の集中」について説明した。AIについては「極めて有利な立場にいる」と強調した。

 カナダの投資銀行、カナコード・ジェニュイティのマリア・リップス・アナリストはリポートで「AIベースのツールが広告主のパフォーマンスに大きな影響を与え、コスト削減の取り組みが損益に反映されるようになれば、センチメント(市場心理)は改善するだろう」とした。