米Google(グーグル)や米Meta(メタ)などの「GAFAM」を筆頭とするビッグテック(超巨大IT企業)が転機にさしかかっている。2022年10~12月期決算はGAFAMが5社そろって最終減益となった。景気減速だけによるものなのか、それとも稼ぐ力自体が弱まって「成長神話」が崩壊する兆しなのか。
米Microsoft(マイクロソフト)の2022年10~12月期の売上高は、前年同期比2%増の527億4700万ドル(約6兆8600億円)だったものの、PC事業の低迷が影響し純利益は12%減の164億2500万ドルとなった。同社は2023年1月18日に1万人の人員削減を発表する一方で、米OpenAI(オープンAI)に数十億ドルの投資を決断。AIへの針路を明確にした。
Microsoft──Azure堅調もPC急減
中核事業であるクラウドサービス「Microsoft Azure」は引き続き堅調だった。Azureなどの売上高は前年同期比で31%増加。営業支援アプリの「Dynamics 365」は同21%増、法人向けの「Microsoft 365(旧Office 365)」は同11%増。クラウドサービス全体の売上高は同22%増の271億ドルとなった。
ただし、堅調さには陰りも見える。同社のエイミー・フッドCFO(最高財務責任者)は決算説明会で「(期の後半に当たる)12月はクラウドサービスの伸びが緩やかになった」と減速感を口にした。
堅調な推移を見せたクラウドに対して、PC事業の失速は著しい。PCメーカー向けのWindows販売を示す「Windows OEM」の売上高は前年同期比で39%減少した。PC事業全体の売上高は前年同期比19%減の142億3700万ドルに落ち込んだ。
米調査会社Gartner(ガートナー)は2023年1月11日、2022年10~12月の世界のPC出荷台数が前年同期比で28.5%減少したとするリポートを発表している。新型コロナウイルスの流行当初、世界で一時的に急増したPCの買い替え需要が一段落し、その反動もあってPC需要は冷え込んでいる。こうした需要減がマイクロソフトのPC事業を直撃した格好だ。
ガートナーは世界的な景気後退とインフレ、金利上昇がPCの需要に大きな影響を与えていると分析。「消費者のPC需要はこの数年で最低レベルまで落ち込んでおり、市場が成長に転じるのは2024年以降になる可能性が高い」と予測した。
Amazon.com──稼ぎ頭のAWSも減速
米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は米国時間2023年2月2日、2022年10~12月期の決算を発表した。売上高は前年同期比8.6%増の1492億400万ドル(約19兆2000億円)だったものの、本業のもうけを示す営業利益は同20.9%減の27億3700万ドルにとどまった。
純利益は前年同期比98.1%減の2億7800万ドル。出資するEV(電気自動車)メーカー、米Rivian Automotive(リビアン・オートモーティブ)の株価低迷による評価損23億ドルを計上したことが影響している。
2023年1~3月期の売上高については、1210億~1260億ドル(前年同期は1164億4400万ドル)と見積もった。
セグメント別では、主力である直営インターネット通販事業の売上高は前年同期比2.3%減少して645億3100万ドル。サードパーティーによる手数料売上高は同19.9%増の363億3900万ドル、有料会員サービスの「プライム」によるサブスクリプションの売上高は同13.1%増の91億8900万ドルとなった。
特徴的だったのは、これまで急成長してきたAmazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス、AWS)のブレーキだ。売上高は前年同期比20.2%増の213億7800ドルと伸びはしたものの、成長率はこれまでで最も低くなった。営業利益は1.7%減って52億500万ドルにとどまった。
決算説明会には、アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が就任後初めて参加した。ジャシーCEOはコスト削減と長期的な投資について説明。「過去2年で25カ所ほどフルフィルメントセンターを新設し、配送網は(米国で)大手のUPSとほぼ同規模になった。これらを(効率的に)運営するために全社で取り組まなければならない。今後、最適化と生産性改善をするために、解決しなければならないことが多くある」と述べ、効率化を優先する方針を掲げた。
米モルガン・スタンレーは決算を受けたリポートで「アマゾンのCEOが物流構築による一時的な課題の多くについて述べたのは喜ばしいことだった。私たちの見解では、それらは確かに一過性であり構造的ではない。我々はアマゾンのフルフィルメントセンターと配送からなる物流ネットワークを最も重要なものの1つと見ている。今後のコマースやその他の新ビジネスを推進するための最も重要な、競争力の源泉の1つだろう」と分析した。