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 前回はデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるにあたってデータマネジメント組織を設ける意義とその役割、内製で進める利点を説明しました。今回はデータマネジメント組織の設計について解説します。

データマネジメント組織の成熟度

 データマネジメント業務を体系化したフレームワーク「DMBOK(Data Management Body of Knowledge)」を本連載の第2回で紹介しました 第2回 。DMBOKを参照することによって、データマネジメント業務について抜け漏れなく把握できるとともに、組織の活動を定義するために利用できます。

 DMBOKの領域ごとにデータマネジメント業務の成熟度を測定するフレームワークもあります。代表的なのは米カーネギーメロン大学が設立したCMMI(Capability Maturity Model Integration)研究所(2016年からISACA、Information Systems Audit and Control Association傘下)によって作成されたDMM(Data Management Maturity:データマネジメント成熟度モデル)です。

データマネジメント業務の成熟度を測定
データマネジメント業務の成熟度を測定
図 CMMI研究所が作成したデータマネジメント成熟度モデルの例
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 データマネジメント業務を体系化したフレームワークは研究機関やコンサルティング会社が独自に作成しています。業界標準のフレームワークがあるわけではありません。DMMはその中でも多く参照されるフレームワークの1つです。成熟度をレベル1からレベル5に分ける仕組みです。「データガバナンス」「データモデリングとデザイン」といった領域がどのレベルにあるかを可視化できます。こうすることで目標を設定し、レベルを上げていく目安にできます。現在の成熟度からレベルアップする計画を立てるために使えます。

レベル分けして可視化する
レベル分けして可視化する
表 データマネジメント成熟度のレベル分けの例
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失敗しないためのデータマネジメント

 DXを進めるためのデータマネジメントで重要なのは、DXの目標とリンクした成熟度目標を立てることです。目的はあくまでDXを進めてビジネスで成果を上げることです。データマネジメントはその手段だからです。

 データマネジメント単独で成熟度を上げることや、データ基盤を導入すること自体を目標にしてしまい、成果が得られず失敗する例が後を絶ちません。実際に、データ分析基盤やビジネスインテリジェンス(BI)ツールを導入しても、データ活用が進まない例が多々あります。例えば経営者向けにBIツールを導入した場合、経営層がどのようなデータが経営判断の役に立つかを理解していなければ、使われない可能性が高くなります。同様に、マーケティングや営業、生産管理などでも利用するデータと想定される使い方を理解できていない場合は、意味のあるデータマネジメントにはなりません。

 失敗の原因の1つは組織構造にあります。データマネジメント組織はDXを推進する事業部門とビジネスの目標を共有する必要があり、DXを進めるためのデータマネジメント業務に集中できるような組織設計をすべきです。