Linuxはサーバーによく使われているのに加え、Windowsのようにパソコン用OSとしても利用できる。過去に挑戦して断念したことがある人も無理なく学べるように、ステップアップ式でLinuxを解説する。
Step 13 ディストリビューションの選び方
「Linux」とは、厳密に言えば、OSの中核部分(カーネル)のみを指す言葉です。OSはカーネル以外にも、アプリケーションの部品ともいえる各種ライブラリ、ユーザーとのやり取りを取り扱うシェル、GUIを実現するソフトウエアなど、多くのソフトウエアから構成されています。それらをひとまとめにし、PCにインストールするプログラム(インストーラー)とともに配布される形態を「ディストリビューション」といいます。
Linuxのディストリビューションは何百種類もあります。デスクトップ系ではUbuntuやFedora、サーバー系ではRHEL(Red Hat Enterprise Linux)やCentOS、Ubuntu Serverなどが人気です。
選び方の一つの目安として、ユーザー、とりわけ日本のユーザーが多いUbuntuのようなディストリビューションがお薦めです(図1)。本特集でもUbuntuを使います。
ユーザーが多ければ日本語の情報も多くなります。手持ちのハードウエアが動かない、アプリの使い方がわからないなど、何かにつまずいたときには、情報源は多ければ多いほどトラブルの解消に役立つでしょう。
Step 14 インストールするPCの選び方
Ubuntuをデスクトップ用途で使う場合、公式に推奨されているシステム要件は次の通りです。
- デュアルコア以上、2GHz以上のCPU
- 4Gバイト以上のメモリー
- 25Gバイト以上のHDD/SSD空き容量
- DVDドライブまたはUSBポート
- インターネットアクセス
ここで挙げた数値はインストールするための最小限のものです。実際には、メモリーは8Gバイトもしくはそれ以上あった方が快適に使えますし、内蔵ストレージはHDDではなくSSDの方が高速に動作します。メモリーやストレージに比べれば、CPUはそれほど重要ではありません。
Webサイトを見る、SNSを利用する、といった日常用途であればそれほどの性能は必要ありません。一方、オフィス文書をたくさん開いて仕事をする、画像や動画を編集する、ゲームを快適に楽しむ、といった場合には、それなりのスペックのPCが必要になります。
参考までに、筆者は2022年春、Ubuntu 22.04 LTSの動作を検証するため、10年前に発売されたノートPCを中古で購入しました。その際、新品SSDを購入してHDDから換装しました。トータルで2万4000円。日常的な用途であれば、ほぼストレスなくUbuntu 22.04 LTSを利用できています。
Ubuntuだと動作が重いと感じたときは、より軽量のLinuxディストリビューションを使う方法もあります。軽量ディストリビューションとしては、Ubuntuの派生版(フレーバー)であり、操作性も似ている「Lubuntu」などがお薦めです。
Step 15 PCにインストールする方法
Ubuntuを使い続けるには、SSDやHDDなどの内蔵ストレージへのインストールが不可欠です。Step1で作成した、ライブ起動可能なUSBメモリーを使ってインストールできます。
USBメモリーでパソコンを起動します。最初の選択画面で「Try or Install Ubuntu」を選ぶとインストーラーが起動します。インストーラー画面の右側にある「Ubuntuをインストール」ボタンをクリックします。
追加パッケージの導入設定、導入先となるパーティションの作成、利用地域を表すタイムゾーンの設定、キーボード配列のキーボードレイアウト設定は、特に問題なければそのままの状態で進めます(画面遷移の詳細と、セキュアブートを有効にしたときの手順は読者限定サイト※の資料参照)。
最後に自分の名前と、コンピューターの名前(ホスト名)、Ubuntuを使うユーザー名、パスワードを登録して(図1)、再起動すればインストール完了です。登録したユーザーでログインすれば、Ubuntuのデスクトップ画面が開きます。