少子高齢化や過疎化といった社会情勢を受け、調剤薬局が提供するサービスが変化しつつある。デジタル技術の活用によって、対物業務に割いていた労力を、地域住民の健康の維持・増進サポートや、医療・介護事業者との連携といった新たな業務に割けるようになった。生活者と薬局がインターネット経由でやり取りすることも可能になっている。薬局が「処方薬を提供するだけの場」から脱却すると、どのような医療が実現するだろうか。
オンラインなら病院にかかる前から薬剤師が関与できる
従来、人々が薬局に来るのは病気になって医療機関を受診した後だった。しかし、インターネットに接続できるパソコンやスマートフォンの普及によって、薬剤師は医療機関を受診する前の人にもアプローチできるようになった。こうした強みを生かし「オンライン薬局」を展開してきたのが2013年創業のミナカラ(東京・千代田)である。
同社のサービスでは、LINEを活用した1対1のチャットで薬剤師と利用者をつなげる。薬剤師は、利用者の症状に合った一般用医薬品(OTC医薬品)を紹介したり、薬を購入した後に症状が改善されたかをモニタリングしたりできる。こうした川上から川下までをワンストップで提供できることが特徴である。
ミナカラの創業者である喜納信也取締役は、「体調不良は店舗にいるときではなく日常生活の中で起きる。医療体験のメインは薬を買うところではなく、治していくプロセスにある。薬剤師が人々の日常生活にリーチし、薬のアドバイスをすることが重要だ」と語る。
増大を続ける医療費の抑制策として、医療機関にかかって処方薬をもらうのではなく、自らOTC医薬品などを活用して対応する「セルフメディケーション」が注目されている。薬剤師が相談に乗ることで患者のセルフメディケーションの質を向上させるというミナカラのサービスは、まさに薬剤師の新たな役割と捉えられる。