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 チャットボットAI(人工知能)であるChatGPTの正体やうまい使い方、社会への影響を10個の疑問に答える形で浮き彫りにする本特集。第3回は社会への影響編だ。「ChatGPTは既存のサービスにどんな影響があるの?」「ChatGPTは教育などに悪影響はないの?」「ChatGPTはGAFAMのビジネスにどう影響するの?」「ChatGPTは人間の仕事を奪うの?」の4個の疑問を取り上げる。

【疑問7】ChatGPTは既存のサービスにどんな影響があるの?

【答え7】ChatGPTは間違った回答を返す危険性があるため、企業向けチャットボットAIがすぐにChatGPTに置き換えられる可能性は低い。一方でChatGPTの可能性に期待する声もある。

 チャットは企業に浸透しており、ソフトウエアで自動応答を行うチャットボットAIが社内向けのFAQや社外の顧客対応などに広く使われている。ChatGPTは高性能なチャットボットAIであり、既存のサービスに何らかの影響を与える可能性がある。

 もっとも、チャットボットAIサービスを提供するカラクリの中山智文Product Management Team Leader取締役最高技術責任者(CTO)兼最高製品責任者(CPO)は、商用チャットボットAIに対するChatGPTの影響は限定的だとみる。理由は、ChatGPTが誤った情報を伝える可能性があるからだ。

 中山CTO兼CPOは「チャットボットAIを運用する企業では、外部顧客に間違った情報を伝えてはならないという要求が強い」と語る。このため、質問への回答は人間が作った文章を提示したいと考えている企業が多いという。

 一方で中山CTO兼CPOは「高齢者、若者、熟練者など、問い合わせてきた相手に合わせて言い方を変えるといった用途には、限定的に利用できるかもしれない」と指摘する。社内で使うチャットボットAIとしても利用できる可能性があるという。

 実際にカラクリは、ChatGPTの基になった大規模言語モデル(LLM)のGPT-3を利用している。同社は独自に開発した自然言語処理モデルを基に、チャットボットAIサービス「KARAKURI chatbot」を提供している。導入企業が持つFAQを基に質問と回答のパターンを作成してモデルに学習させ、チャットボットAIを構築する仕組みだ。同社は、質問と回答のパターンをGPT-3で作成することで構築の作業負担を軽減する機能を開発し、2023年2月7日にベータ版として提供を始めた。

 ほかにも、ChatGPTの登場を前向きに捉えている企業がある。AIを利用したチャットボットAI構築支援サービスなどを提供するPKSHA Technologyの上野山勝也代表取締役は「ChatGPTには、チャットボットAIの機能拡張を通じて用途を広げるブースターとしての役割を期待している」と語る。

 企業が定めたFAQに従って受け答えをする商用チャットボットAIは、現在はコンタクトセンターなどへの導入が多い。ChatGPTを導入すれば、例えば雑談機能や、FAQがなく現時点では答えられない問い合わせに暫定的な回答を提示する機能などを実現できる可能性がある。上野山代表取締役は「チャットボットAI業界はまだ黎明(れいめい)期だ。例えばAIと会話しながらレストランを予約するなど、ChatGPTでどのように新しい市場を開拓できるかを日々考えている」と期待を寄せる。

【疑問8】ChatGPTは教育などに悪影響はないの?

【答え8】ChatGPT利用の流れはもはや止められない。長期的にはChatGPTを前提として教育を考え直す必要がある。

 ChatGPTは社会に対する悪影響も懸念されている。教育や研究といった学問分野への影響だ。学生が宿題や研究リポートをChatGPTで作成してそのまま提出することが常態化すると、教師側が学生の実力を評価できなくなり、学生側は何の知識も残らなくなってしまう。