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 「(2023年に出荷を予定する)『Cybertruck(サイバートラック)』以降の電気自動車(EV)を48V系に移行する。他の自動車メーカーやサプライヤーもぜひ、この流れに参加してほしい」

 米Tesla(テスラ)は、2023年3月1日に米テキサス州にある同社の工場Gigafactoryで投資家向けイベント「2023 Investor Day」を開催した。「Electric Architecture」について説明した同社vice president of Low Voltage and Silicon EngineeringのPete Bannon氏は、このように宣言した。

 これまで、車両の低電圧ネットワークは、テスラ車も含めて12V系が使われてきた(図1)。Bannon氏によれば、48V系に移行するのは、ハーネスを細く軽くし、システム全体を小型化するためだという。

 「(車両の低電圧ネットワークに)12V系が採用されてから60年間、車両に必要となる電力は年々増加しており、今や200Aを超えている。これを賄うためにハーネスは重くなり、コストも増加している。12Vから48Vに変更すると同じ電力に対して必要な電流が4分の1になる。ハーネスの電力損失は抵抗に電流の2乗を掛けたものであるため、電力分配経路で消費される電力は16分の1になる。これにより、これまでより細いワイヤ、小さなeヒューズ、小さなコントローラー(=ECU:電子制御ユニット)を採用できるようになる。さらに、(パーツを冷やすための)ヒートシンクを小さくしたり、あるいはヒートシンクそのものをなくしたりして、質量と体積の点で車両に良い影響をもたらす」(同氏)。

図1 サイバートラックから48V系に全面移行
図1 サイバートラックから48V系に全面移行
 (出所:Tesla)
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 このほか、低電圧系の蓄電池として、2022年から鉛蓄電池を廃し、工具不要(Toolless)のコネクターを採用したリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)を採用していることも明らかにした(図2)。鉛蓄電池は4年程度で交換しなければならないが、LIBであれば、車両寿命と同じ寿命を確保できるうえ、容量を87%も減らせるとした。

図2 鉛蓄電池をリチウムイオン2次電池に移行
図2 鉛蓄電池をリチウムイオン2次電池に移行
(出所:Tesla)
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