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世界3大クラウドが進化を続けている。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)の「AWS(Amazon Web Services)」、米Microsoft (マイクロソフト)の「Microsoft Azure」、米Google(グーグル)の「Google Cloud」である。最近ではDX(デジタル変革)推進のニーズを受けて、アジャイル開発や高度なデータ分析に必要な機能に注目が集まる。今どのクラウド、どのサービスが秀でているのか。3大クラウドのサービス内容、機能、サポートなどについて39項目で徹底比較する。

 今回は、仮想マシン(インスタンス)やコンテナを中心に3大クラウドが提供するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の進化を見ていこう。仮想マシンについては、いずれのクラウドもより高性能、かつ多様なサービスを投入し品ぞろえを増やしている。仮想マシンに加える形で、コンテナ活用を後押ししてきたのが、2018年からの5年の大きな変化である。また、特にAWSがサーバーレス化に力を入れてきたのが注目点だ。

Armベース仮想マシンの活用も進む

 まずは仮想マシンを提供するサービスだ。AWSとMicrosoft AzureはCPUのコア数やメモリー容量、ディスク容量などを組み合わせたインスタンスタイプを用意。ユーザーはその中から要件に合ったものを選ぶ。例えばMicrosoft Azureは現在11シリーズ、550種類以上を提供している。2018年時点では80種類程度だったので、選択肢が7倍弱に増えた計算だ。

仮想マシンの比較
仮想マシンの比較
(出所:各社へのヒアリングを基に日経クロステックが作成)
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 インスタンスの拡充により、ユーザーは従来よりも高性能な仮想マシンを入手できる。同時に、よりきめ細かな単位でニーズに合致したインスタンスを選べる。ちなみにGoogle Cloudは、従来よりコア数、メモリー容量をユーザーが自由に組み合わせ可能だ。

 仮想マシンの用途として多いのが、オンプレミス(自社所有)環境にある物理マシンや仮想マシンの移行先である。その移行支援サービスも手厚くなってきた。「5年前はVM Importを使いAmazon S3経由で仮想マシンイメージをAmazon EC2に取り込んでいたが、今ならAWS Application Migration Serviceで比較的簡単に自動で移行できる」(アマゾン ウェブ サービス ジャパンの小林正人技術統括本部技術推進本部本部長)。例えばコープさっぽろはこれを使い、オンプレミス環境の物理サーバーや仮想マシン650台から成る190システムのAWS移行を進めている。

 仮想マシンサービスの進化では、英Arm(アーム)のArmベースプロッセサーの採用も注目点だ。AWSは独自開発の「AWS Graviton3」を搭載した「Amazon EC2 C7gインスタンス」を展開する。ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、バッチ処理、動画エンコーディングなど計算量の多いアプリに向くとし、従来のIntelベースよりコストパフォーマンスに優れるという。Armベースの仮想マシンはMicrosoft Azureも提供済みである。

 2023年2月には、AWSと理化学研究所がスーパーコンピューター「富岳」の共同研究開始を発表。Graviton3およびその拡張版「Graviton3E」を使い、富岳用アプリをAWS上で稼働させる検証に取り組むなど、Armベース仮想マシンの活用が進んできた。

 安価な仮想マシンサービスに目を向けると、これまでAWSが提供してきた「スポットインスタンス」と同等のものをMicrosoft AzureとGoogle Cloudが追加した。各クラウドのキャパシティーに余裕があればユーザーは仮想マシンを調達でき、キャパシティーがひっ迫すると回収されて使えなくなるが、例えばGoogle Cloudの「Spot VM」は通常インスタンスに比べて最大91%引きで使える。

 AWSは仮想マシンを中心にIaaSを継続的に値下げしてきた。この分野のコストパフォーマンス競争はAWSが先行し、Microsoft AzureとGoogle Cloudが追いかける展開が続きそうだ。