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 世界3大クラウドが進化を続けている。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)の「AWS(Amazon Web Services)」、米Microsoft (マイクロソフト)の「Microsoft Azure」、米Google(グーグル)の「Google Cloud」である。最近ではDX(デジタル変革)推進のニーズを受けて、アジャイル開発や高度なデータ分析に必要な機能に注目が集まる。今どのクラウド、どのサービスが秀でているのか。3大クラウドのサービス内容、機能、サポートなどについて39項目で徹底比較する。

 今回は、3大クラウドが提供する開発支援サービスやプログラムを比較する。これは2018年時調査の表にはなく、新設した項目だ。ローコード開発ツール、データ管理サービス、統合開発環境、移行や内製支援のプログラムの順番で見ていこう。

開発支援サービス・プログラムの比較 
開発支援サービス・プログラムの比較 
(出所:各社へのヒアリングを基に日経クロステックが作成)
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 まずは近年注目を浴びるローコード開発ツールを見ていこう。DX機運の高まりとは裏腹に、システム開発の現場では人手不足が指摘されて久しい。そこでIT専門人材でなくても容易にアプリケーションを開発できるローコード開発ツールが注目を集めてきた。米ガートナーは2025年までにアプリケーション開発の70%がローコードを使用したものになると予想している。3大クラウドも需要に応えるべく、ドラッグ&ドロップだけでアプリを開発できるようなツールを提供してきた。

 Microsoft AzureはローコードによるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)支援ツールとして「Power Automate」を提供する。画面上でオブジェクトをドラッグ&ドロップで配置するだけで簡単なアプリをつくれるというもので、身近な業務を自動化するのに役立つ。

 Google Cloudの「AppSheet」は、ブラウザー上で項目を設定するだけでアプリを開発できるほか、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連係させることで、ベースとなるスプレッドシートからSalesforceなど様々なデータソースに接続できる。グーグルが強みを持つ機械学習などのAPIが豊富に用意されており、「誰でもノーコードでAIを活用したアプリをつくれる」(グーグル・クラウド・ジャパンの菅野信執行役員ソリューションズ&テクノロジー担当)。例えばLIXILはAppSheetを用いて2万を超えるアプリを内製したという。

 AWSはプログラミングすることなくアプリを開発できる「Amazon Honeycode」を2020年6月にベータ版として発表した。ただし、ローコード開発ツールの提供方針は、Micosoft AzureやGoogle Cloudと異なる。アマゾン ウェブ サービス ジャパンの小林正人技術統括本部技術推進本部本部長は「ある程度目的を絞り、なるべくコードを書かずに開発ができるようなツールを拡充している」と説明する。データのETL(抽出/変換/ロード)をGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)で簡単に設定できる「AWS Glue Studio」などが代表例だ。ローコードのツールそのものを提供するというよりも、なるべくコーディングを少なくするという考え方をほかのサービスに組み込んでいく姿勢がうかがえる。