世界3大クラウドが進化を続けている。米アマゾン ウェブ サービスの「AWS(Amazon Web Services)」、米マイクロソフトの「Microsoft Azure」、米グーグルの「Google Cloud」である。最近ではDX(デジタル変革)推進のニーズを受けて、アジャイル開発や高度なデータ分析に必要な機能に注目が集まる。今、どのクラウド、どのサービスが秀でているのか。3大クラウドのサービス内容、機能、サポートなどについて39項目で徹底比較する。
今回は3大クラウドを追いかけるクラウドの1つ、米IBMの「IBM Cloud」を取り上げる。IBM Cloudは2023年3月にISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)認定を取得するなど、クラウドベンダーとしての存在感を高めつつある。長年アウトソーシング事業を手掛けてきた同社は、安定性を重視し3大クラウドやオンプレミス環境との併用を推奨するハイブリッド戦略をとる。詳しく見ていこう。
「世界の77%の企業がハイブリッドクラウドを活用しているといわれており、クラウドの役割も変わってきている。円安・物価高によるコスト増やデータ主権といった問題を考えると、一部にオンプレミスを活用していくなど、クラウド最適化の位置づけが変わるのではないかと思っている」。日本IBMの今野智宏執行役員テクノロジー事業本部クラウド・プラットフォーム担当は、同社がハイブリッド戦略を柱に据える理由をこう語る。
2021年3月に提供開始した分散クラウドを管理するためのプラットフォーム「IBM Cloud Satellite」が代表的なサービスだ。Red Hat Enterprise Linux サーバーが導入されていれば、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド、エッジといったさまざまな環境からIBM Cloudのサービスをマネージドサービスとして利用できる。顧客情報など重要なデータはオンプレミス環境で管理したいといった理由でハイブリッドクラウドを選択する企業は少なくない。
中核を担うのはKubernetesコンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」だ。背景にはIBMが2018年に米Red Hat(レッドハット)を買収したことがある。Red Hat OpenShiftを広めると同時に、コンテナを活用できる自社製品を充実させてきた。
例えばパッケージソフトウエア「IBM Cloud Paks」もRed Hat OpenShift上に構築されている。同社が長年提供してきた「WebSphere Application Server」や「Db2」といった主要なミドルウエアやソフトウエアを、クラウドネーティブなプラットフォームに合わせて再設計したものだ。
今野執行役員は「日本では欧米に比べコンテナの盛り上がりに欠ける」とこぼす。コンテナ活用の動きを活性化させるため、2021年4月に「コンテナ共創センター」を開設した。これまでに1000人以上が参加したという。