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 SNS(交流サイト)が広く使われ、情報の拡散スピードが格段に速まった現代。もはや世間から「情報を隠しているのではないか」と受け取られるだけで、炎上リスクは一気に高まる。料理宅配大手の出前館がシステム障害を巡る広報対応の不備をきっかけに炎上したケースは、その典型例といえる。

システム障害を対外公表しないまま利用者に料金を請求

 「過去の利用料金について一括請求が来た」「6万円を請求されて死にそう」「決済エラーがあったから2週間以内に支払ってくれと一方的なメールが来た」――。

 2021年6月中旬、SNS上に嘆きの声が広がった。投稿者たちが訴えたのは「過去に支払ったはずの料理宅配サービスの代金を突如請求された」という問題だ。具体的には、同社システムの不具合が原因で一部顧客の支払い処理がうまくいかず、自動的に返金または請求取り消しの扱いになっていた。

 この不具合は2018年8月から2021年4月まで2年以上にわたって続いていた。事態を把握した同社は2021年6月ごろから、未払い分を過去に遡って顧客に一括請求したのだ。

 このとき出前館は、一般ユーザーの目に留まりやすい自社サイトの「お知らせ」ページには、自社システムの不具合に関する情報を一切掲載していなかった一方で、請求対象者にはメールを送って代金の支払いを要求した。これに加え、自社側のシステムに落ち度があったことをはっきり言い切らない姿勢が、ユーザーの反感を買った。

 それだけではない。炎上の火に油を注いだのが「noindex」を使ったことだ。noindexをWebページのメタタグに記述しておくと、検索エンジンはそのページをインデックスしないため、結果としてそのページに検索サイトからたどり着くのが難しくなる。なおWebブラウザーの機能などでページのソースを表示すれば誰でもnoindexを記述しているかどうかが分かる。

出前館が対象者に通知したお知らせページ。Webページには検索エンジンの対象から外す「noindex」タグが設定されている
出前館が対象者に通知したお知らせページ。Webページには検索エンジンの対象から外す「noindex」タグが設定されている
(出所:出前館)
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 出前館は対象者に未払い金の請求を案内するWebページを公開していたが、そこにnoindexを記述していた。その事実が判明するとSNS上でたちまち炎上し、「決済エラーのプレスリリースをnoindexで検索に引っかからないようにするとか終わってるでしょ」「同情の余地はない」「noindexで検索回避はイメージ悪いなぁ……」といった投稿が相次いだ。

 出前館は一連の騒動を受けて2021年7月5日に、自社システムの不具合や顧客への代金請求などの事実を認めるお知らせをWebサイトに掲載した。ただし、システムの不具合の原因や経緯など詳細については明らかにしていない。