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 「新規の案件は引き受けたくても引き受けられない。人手が足りないからだ」。グローバルにネットワークを持つ大手コンサルティング会社からはこんな声が相次ぎ漏れる。

 PwCコンサルティングの桂憲司専務執行役プラクティス本部兼サービス&プラットフォームパートナーは、「プロジェクトを引き受ける前に顧客と話して、改革をしたいといった意欲が少ないなど当社と合わないと事前に分かる場合は、リソースを考慮して依頼されても受けないことがある」と話す。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えていることを追い風に、コンサルティングサービスの需要が伸びている。「顧客体験(CX)をより良いものにするために新技術を採用したい」「知見のない技術を使って新たな事業を創出したい」、こういったプロジェクトに取り組む際に、専門的な知見を持ってアドバイスを提供するのがコンサルティングサービスだ。

 ガートナージャパンの調査によると日本国内のコンサルティングサービス市場は右肩上がりだ。IT関連のコンサルティングサービスの市場を見ると、2022年の速報値は1兆540億円。予測では順調に成長を続け、4年後の2026年には1兆4500億円に達する見込みだ。

日本のITコンサルティング市場規模予測
日本のITコンサルティング市場規模予測
(出所:ガートナージャパンのデータを基に日経クロステック作成)
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 拡大するコンサルティングへの需要を獲得しようと、大手コンサルティング会社は人員を毎年拡充している。しかし冒頭の声のように、コンサルティングの需要に人材獲得は追いついていない。

 最大手であるアクセンチュアの日本法人はこの4年近くで社員数を約6000人増やした。2019年に約1万3000人だった社員は2022年12月末時点で約1万9000人になっている。グローバルでは1年半で約1万9000人を削減するという報道もあったが、日本法人は9期連続で2桁成長を達成するなど好調だ。PwCコンサルティングも人員を拡充している。2018年6月末に約2350人だった社員数は、2022年6月末に約3850人となった。それでも各社とも「人が足りない」と声をそろえる。

DXがビジネスとITの間の壁を壊す

 一般に、IT領域を中心にシステム導入をゴールとしたコンサルティングサービスを「ITコンサルティング」と呼び、組織改革や経営戦略の策定などを「ビジネスコンサルティング」と呼ぶ。これまで両者には明確な区別があった。

 「一口にコンサルティング会社といっても様々ある。得意分野やグローバルへの展開、システム構築支援の有無などを踏まえて選ぶ必要がある」とガートナージャパンの海老名剛リサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデントアナリストは話す。

 米欧など海外に本部を持ち世界的なネットワークを持つコンサルティング会社大手(本特集では総称として「海外勢」と呼ぶ)であるアクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティング、KPMGコンサルティングなどは、ITコンサルティングとビジネスコンサルティングのそれぞれを提供する組織を社内に持っているケースが多い。国内に本社を置くコンサルティング会社も、NECのグループ会社のアビームコンサルティングはITコンサルティングを中心に、ビジネスに近いコンサルティングも提供している。富士通が2020年4月に本格始動させたコンサルティング会社RidgelinezはITコンサルティングに注力している。