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 DX(デジタルトランスフォーメーション)を追い風に需要が拡大するコンサルティングサービス。新規事業を創出したい、新たな領域でビジネスを拡大したいなど、曖昧なプロジェクトを様々な知見を持った専門家に相談したいというニーズが高まっている。

 ニーズの高まりに合わせ、海外に本部を置き世界的なネットワークを持つ大手コンサルティング会社(本特集では総称として「海外勢」と呼ぶ)は規模を拡大している。各社のコンサルティング事業あるいはITコンサルティング事業に関わる人員は右肩上がりだ。大きな設備の不要なコンサルティング会社は人員の増加が供給能力の増加につながる。

グローバルに展開するコンサルティング会社の日本拠点の従業員数の推移
グローバルに展開するコンサルティング会社の日本拠点の従業員数の推移
各社からの提供データを基に作成。アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティングの人数は概数(出所:日経クロステック)
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 右肩上がりとはいえ、各社のリソースの共有には限りがある。顧客が望むサービスを全て提供できるわけではない。各社とも自社の強みを打ち出すことで、競合他社との差異化を目指している。

 違いの1つがサービスの提供範囲だ。プロジェクトの構想段階の支援からシステムの実装、導入後の保守運用など、どこからどこまで手掛けるかはコンサルティング会社によって異なる。海外勢の各社は監査法人がグループの中心になっているケースが多い。IT関連コンサルティングサービスはERP(統合基幹業務システム)パッケージといった会計システムの導入に端を発している会社が多く、プログラミングが必要なシステム実装まで手掛けるかどうかは現在も分かれている。

 サービスの効率化の方法や実現手段、重視するプロセスなど、一口にコンサルティング会社といっても会社ごとに異なる。海外勢の日本法人は世界的なネットワークの傘下にあり、他国の成功事例やノウハウを共有し、新しい案件などを共有する。グローバルのネットワークの強さも提供できるサービスを左右する。

主なコンサルティング会社の概要
(出所:各社からの提供データを基に日経クロステックが作成)
企業名アクセンチュアデロイトトーマツコンサルティングKPMGコンサルティングPwCコンサルティング
日本の売上高非公開(9期連続2桁成長を達成)非公開(デロイトトーマツグループ全体の2022年5月期の売上高は3129億3300万円)非公開(KPMGジャパン全体の2022年6月期の売上高は1850億円)非公開(2023年6月期はPwCコンサルティングで1000億円を超える見込み)
日本の従業員数約1万9000人(2022年12月末)約4300人(2022年5月末)1302人(2022年6月末)約3850人(2022年6月末)
グループ名称(主要法人)デロイトトーマツグループ(監査法人トーマツ、デロイトトーマツ税理士法人など)KPMGジャパン(あずさ監査法人、KPMG税理士法人など)PwC Japanグループ(PwCあらた監査法人、PwC税理士法人など)
グローバルの従業員数約73万8000人 (2023年3月時点)41万5000人(2022年度)26万5646人(2022年度)約32万8000人(2022年度)
グローバルの売上高616億ドル(2022年度)593億ドル(2022年度)346億4000万ドル(2022年度)503億ドル(2022年度)

 「コンサルティングサービスを依頼したいという顧客側も、コンサルティング会社の特徴を見極める必要がある」とガートナージャパンの海老名剛リサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデントアナリストは指摘する。事業会社がコンサルティング会社に依頼するときも、あるいはITベンダーの立場でコンサルティング会社と協業したいと考えるときも、各社の強みを見極める必要がある。

 そこで、国内事業の規模を拡大している海外勢の各社が強みとする点について、順に見ていこう。まずは2023年3月23日(米国時間)に大規模な人員削減を発表して世間を驚かせたアクセンチュアだ。

期待に応えるには「一番」が必須

 アクセンチュア米本社が今回発表した人員の削減数は約1万9000人だ。この人数は現在のアクセンチュア日本法人と同じ数に相当する。今後1年半でバックオフィスの人員を中心に削減する。「各国が担う役割やビジネスの成長度合いによって異なるため、全ての国や地域で一律に適用されるものではない」(日本法人の広報担当者)としており、3月末時点で具体的な影響は不明とみられる。

 米本社は人員削減に着手したが、日本法人は9期連続で2桁成長と好調だ。「顧客の数は増えており、当社が提供するサービスの範囲も広がっている」と日本法人の土居高廣常務執行役員テクノロジーコンサルティング本部統括本部長は強調する。これまで顧客として大企業が中心だったが、近年は中堅・中小企業へも裾野が広がっているという。DXの普及により「企業規模を問わず問題意識が共通になってきているからだ」と土居常務執行役員はみる。