医用画像をAI(人工知能)で解析して診断に役立てる「画像診断支援AI」の開発が活況だ。大腸を対象とした診断支援AIが2019年3月から販売されたことを皮切りに、現在では国内において数十の診断支援AIが実用化されている。解析する画像の部位も、肺や胃、咽頭、乳房、骨、目、脳など対象が広がってきた。大手企業からスタートアップまで、様々な企業が参入している。
大腸内視鏡の画像解析で先行
日本で初めて承認を取得した診断支援AIは、サイバネットシステムが昭和大学横浜市北部病院や名古屋大学大学院と共同で開発した「EndoBRAIN(エンドブレイン)」だ。オリンパス製の大腸内視鏡で取得した画像をAIで解析し、ポリープが腫瘍かどうかをパーセンテージで示す。
人間ドックなどで大腸内視鏡を利用した検査の実施数が多いこともあり、同内視鏡の画像を解析対象とした製品が数多く実用化されている。富士フイルムやNECが承認を取得したほか、両備システムズが岡山大学と共同で開発を手掛けている。大手企業以外にも、診断支援AIスタートアップのエルピクセルが、2022年11月に大腸ポリープ候補の検出を支援する製品の承認を取得して実用化した。
肺を対象とした診断支援AIの実用化も進んでいる。実用化した製品のうち約半数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の肺炎の診断を支援するものだ。新型コロナの拡大時に、肺炎の診断を支援する目的で開発が活発化した。実用化した製品のもう半分は、肺部分に白い影のように映る肺結節などを検出するものだ。肺結節が映っている場合、肺がんなどの可能性がある。
X線撮影検査やCT(コンピューター断層撮影)検査がきっかけで早く疾患が見つかれば、早期の治療開始につながる。AIを活用することで、小さな肺結節を見落とすリスクが低減すると期待されている。国内では、健康診断などで肺を映す胸部X線画像やCT画像が多くて市場が大きいため、参入する企業が比較的多いと考えられる。