厳格な新型コロナウイルス対策が緩和され、多くの市民が春節(旧正月、2023年は1月22日)の連休に実家へ帰省した中国では、電気自動車(EV)の充電待ちに関する話題がWebニュースやSNS(交流サイト)をにぎわせた。あるEVユーザーは、「ガソリン車であれば片道7時間だったが、今回は充電に1時間、充電待ちに5時間を要し、13時間もかかった」と嘆く。
前回、燃料代(電気代)が安価になることが、自動車ユーザーが電気自動車(EV)に乗り換える大きな動機だと解説した。では逆に、乗り換えをためらわせる要因は何だろうか。最も大きいのが、EVを利用する上での“充電の不安・不満”である。EVを広く普及させるためには、充電に関連した数々の課題を解決する仕組みが不可欠となる。
日本自動車工業会の調査によると、購入時の懸念として、EVユーザー200人中の52人が「燃料補給・充電に時間がかかる」を挙げた。これは「1回の燃料補給・充電での航続距離が短い」の49人、「車体価格が高い」の45人などをしのぎ、最大の回答数となっている。
また、日本自動車連盟(JAF)によると、2020年度のEVのロードサービスのうち、9.9%が燃料(電池)切れによるものだった。四輪車全体の燃料切れの割合が約2.1%だったことを踏まえると、EVの燃料切れのリスク割合は内燃機関車の4~5倍に及ぶと考えられる。
内燃機関車ならば、1~2分もあればガソリンスタンドで十分な量を給油できる。スタンドも各所に存在し、よほどの辺境地でない限りは燃料切れを心配しながら運転するような事態にはならない。ところがEVでは、急速充電であっても15分以上、普通充電ならば30分以上を要する。しかも現状は、いつでもどこでも充電設備を利用できる環境があるわけではない。充電時間への不満や旅先などで電欠になる不安を抱えた状況は、ユーザーにとって確実にストレスがかかる。
こうした課題は、EVの普及で先行する米国や中国で既に表面化し、克服するアイデアも続々と登場している。中国では、蓄電量が不足した電池を数分で充電済みのものに自動交換するステーションが拡大している(図1)。
遅かれ早かれ、日本でもEVの保有台数は増えていくだろう。EVユーザーの充電に対する不安や不満の高まりは、新しい商機にもなる。