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 文章から画像を生成する「Stable Diffusion」や「Midjourney」といった画像生成AI(人工知能)が大きな注目を集めている。こうしたAIを利用すれば、まったく絵が描けない人でもプロ並みの画像を手に入れられる。

 この分野にクリエーター向けツール大手の米Adobe(アドビ)が参入した。同社は2023年3月下旬、画像生成AI「Adobe Firefly」を発表した。さらに同年4月17日には、Fireflyを動画編集に適用するデモを公開している。

 現在のFireflyはベータ版で、希望者に対して順番に招待する形で公開している。4月下旬時点で提供しているのは、テキストから画像を生成する「Text to image」、文字に修飾を加える「Text effects」、ベクター画像の色を変更する「Recolor vectors」の3つの機能だ。

Fireflyの機能を利用できるWebページ
Fireflyの機能を利用できるWebページ
(出所:米アドビ)
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学習データやキーワードに配慮

 アドビはFireflyを「安心して商用利用できる画像生成AIの第一歩」と位置付けている。このため、学習には著作権の問題がある画像を利用していないという。具体的には、商用利用可能な「Adobe Stock」の画像と、独自に収集した著作権切れの画像やライセンス的にオープンな画像を使っている。

 ただ、Adobe Stockにはゲーム会社が著作権を持つ有名なキャラクターの画像なども含まれている。この点に関して、アドビ日本法人の西山正一デジタルメディア事業統括本部DX推進本部常務執行役員兼CDO(Chief Digital Officer)は「誤解がある」と語る。Adobe Stockの中には、報道用に提供している「エディトリアル」というコンテンツがあり、キャラクターの画像などはここに含まれるという。西山CDOは「エディトリアルコンテンツはFireflyの学習データからは除外している」とする。

 リスクをはらむようなキーワードも除外しているという。例えば「銃」や「攻撃する」などだ。「銃の画像が出てこないことがクリエーターにとって致命的な機能の欠落ではないと考えている」(西山CDO)。銃の画像が必要であれば、クリエーターが自分で入れればいいからだ。ユーザーが意図していないのにそうした画像が出てくるほうが、商用利用の際にはリスクになると考えているという。

 また、クリエーターがAIに自分の作風をまねされることを嫌がるケースもある。そこで正式サービス時には、Adobe Stockに画像を提供しているクリエーターが、自分の画像をAIの学習に使わないよう指定できる何らかの仕組みを用意する方針だ。一方、AIの学習に協力するクリエーターに対しては対価を支払う仕組みを提供する。