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 物流2024年問題の解決へ、スタートアップも支援体制の強化を急ぐ。アナログな作業や情報をデジタルに置き換え、物流に関する需要と供給をうまくマッチングしてトラック運転手の生産性を高める。単発のアルバイト人材をタイムリーに手配して、トラック運転手の倉庫作業を肩代わりする「荷役分離」を支援する動きも始まった。

 「物流版のAWS(Amazon Web Services)」。物流テックのスタートアップ、オープンロジの伊藤秀嗣社長は、目指す姿をこう表現する。AWSはサーバーやストレージといったIT資源を必要なときに必要なだけ利用できる、クラウドサービスの先駆けだ。これになぞらえ、物流に関する資源を荷主企業が必要に応じて利用できるようにする理想像を描く。

 同社が提供するのは、EC(電子商取引)事業者を主な顧客とする「フルフィルメントサービス」だ。EC事業者の受注から梱包、在庫管理、発送、受け渡し、代金回収までの一連の業務を担う。

オープンロジが提供するフルフィルメントサービスの特徴
オープンロジが提供するフルフィルメントサービスの特徴
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全国の倉庫を束ねて仮想的な巨大倉庫を

 実際にフルフィルメントの業務を請け負うのは、オープンロジが組織する倉庫会社や配送会社だ。同社は倉庫会社60社、配送会社10社と契約し、全国をカバーする仮想的な物流ネットワークを築いている。各倉庫の収容規模や得意な荷物の種類、保管や配送に関する機能、倉庫の空き状況といったデータを一元管理し、荷主企業の要望に応じた倉庫を手配する。荷主企業は入庫料や保管料、配送料を、倉庫を利用した分に応じてオープンロジに支払う。

 トラック運転手の労働時間の上限を規制する物流2024年問題に対して、伊藤社長は同社の仮想的な物流ネットワークが効果を発揮するとみる。具体的には長距離運転が難しくなることによる配送網の「断片化」への対策だ。

 大規模な物流拠点に荷物を集約し長距離を運ぶ従来のスタイルに対して、今後はより短い距離を継走するのを前提に物流拠点が分散していくとみる。荷主企業にとっては、工場の最寄りの物流拠点へ入庫・出荷したり複数の物流拠点を使い分けたりと、「拠点化と分散化を高度に組み合わせる物流戦略が求められるようになる」(伊藤社長)。倉庫と配送の全国ネットワークを持ち、各倉庫のデータを握るオープンロジは、荷主の拠点分散化や配送業者の継走といった双方のニーズに応えられるとする。