ドイツの鉄鋼メーカーSalzgitter(ザルツギッター)は、生産過程で二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない鉄鋼材料(グリーン鉄鋼)「SALCOS」で造った自動車フレームの試作品を、世界最大級の産業展示会「HANNOVER MESSE 2023」(2023年4月17~21日、ドイツ・ハノーバー)に出展した(図1)。2026年から本格的にSALCOSの生産を開始し、同年からドイツBMWの欧州の工場に供給を始める。
SALCOSの製造プロセスでは、まず鉄鉱石を水素で還元する直接還元によって鋼の原料となる海綿鉄*1を得る。高炉でコークスを使用する現在主流の製鉄方法と比較して、CO2排出量を最大95%削減できるという。化石燃料を使う従来手法では、鉄鉱石の還元過程で大量のCO2を排出してしまう。一方で、水素による直接還元で生成されるのは、CO2ではなく水だ。
その後は、海綿鉄を電気炉で鉄スクラップと一緒に溶融して製鋼。これを圧延機などでさまざまな形状の鉄鋼材料に加工する。展示会で披露した自動車フレームは、板状に成形したSALCOSに溶融亜鉛めっきを施し、プレス成形したものだ(図2)。「製鉄から最終製品に仕上げるまでに、従来からCO2排出量を80%削減できた」(同社)という。電気炉や亜鉛めっき工程の電力には再生可能エネルギーを使用している。