ドイツFraunhofer-Gesellschaft(フラウンホーファー研究機構)のレーザー技術研究所(ILT)は、リチウムイオン2次電池(LIB)の製造工程を改善するレーザー技術を開発した。具体的には、負極材の乾燥工程における消費エネルギーを半減する技術と、LIBの出力密度と寿命を向上させる技術の2つ。世界最大級の産業展示会「HANNOVER MESSE 2023」(2023年4月17~21日、ドイツ・ハノーバー)にコンセプトを展示した。
1つ目のレーザー技術を用いた負極材の乾燥工程では、従来の乾燥炉を使った工程と比べて、エネルギー消費を半減した。一般的な乾燥工程では、黒鉛(グラファイト)を含む負極材を液体状の混合物(スラリー)にして銅箔に塗布し、乾燥させてシート状の負極とする。フラウンホーファーによると、現在の乾燥工程は160~180℃の連続炉で行われ、大型設備が必要となる。
そこで、ILTの研究者らは、乾燥工程にダイオードレーザーを用いた。波長980nm、出力6000Wのレーザーを照射すると、黒鉛の粒子がレーザーのエネルギーを吸収して発熱。液体が蒸発して乾燥する仕組みで、従来よりも高い蒸発速度が得られる。「LIBの製造工程のうち、乾燥工程のエネルギー消費は全体の27%を占める」(フラウンホーファー)。よって、今回のレーザー技術で製造工程全体の13~14%のエネルギーを削減できる計算になる。設備の設置面積も、従来の乾燥炉と比べて60%削減できるという。