自然言語で建物を設計できるようにする――。東京大学発スタートアップ企業の燈(あかり、東京・文京)は、ChatGPTなどの対話型AI(人工知能)に使われる大規模言語モデル(LLM)を建設業に特化させた「AKARI Construction LLM」(CoLLM)の提供を始めた。対話形式で過去の議事録や図面データなどを検索したり、仕様書などの文章を自動で生成したりできる。建設関連の法令やユーザー企業の社内資料を学習させることで、検索能力や出力する情報の精度を向上させた。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の操作も可能だ。
ChatGPTはインターネット上の様々な分野の文書を学習させた汎用LLMであるため、専門性の高い領域では正確な回答が難しい。また、回答に至るまでの過程が不明であるため、誤った情報を答えていないかチェックするのが難しく、そのまま建設業の業務に組み込むことが困難だった。
そこで燈は、LLMに建築基準法などの関連法規や国の標準仕様書、ユーザー企業の社内資料などを学習させることで、専門性の高い質問にも高い精度で回答できるようにした。一度に回答文を提示させるのではなく、段階を踏んで情報を検索し、引用元のデータとともに表示する仕組みにした。チャット画面に質問を打ち込むと、AIの思考過程と検索結果が表示されるイメージだ。参照するデータをユーザーが自ら選び、検索フローを構築できるためファクトチェックがしやすくなる。
こうした技術を基に提供するのが「AI建設コンシェルジュ」。例えば、ある案件のうち最も広い部屋の内装にかかった金額を知りたい場合、仕様書や設計図書などをAIに読み込ませる。そしてチャットボットに「床の面積が一番広い部屋の仕上げ材の種類と合計金額はいくら?」といった質問を入力する。すると、AIが質問文を基に必要な情報を検索して回答してくれる。
このケースではまず、設計図書のデータから床面積を計算したり、仕上げ表から資材の種類を検索したりする。そして、使用した資材の平米単価を原価管理データベースなどから参照し、床面積に平米単価を掛け合わせることで実際にかかった金額を計算する。AIは算出した総額を基に、「最も床面積が広い部屋の仕上げ材の種類はタイルカーペットで、合計金額は19万6000円です」などと回答する。