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 オンプレミス(自社所有)を前提とした商売をしたいならば、クラウドビジネスへの転換を無理に勧めることはしない。しかしユーザー企業の声を聞くならば、クラウドシフトは必然ではないのか――。

 こうした考えの下、日本IBMやSAPジャパンといった強力なオンプレミス事業を持つITベンダーは今、事業の主軸をクラウドサービスへ移そうとしている。その動きに合わせて、各社の製品やクラウドサービスを販売するパートナー企業に対するパートナープログラムもクラウドシフトを鮮明にしている。

 クラウドベンダーがオンプレミスからのシフトを急ぐ一方で、パートナー企業にとってオンプレミス型のビジネスからクラウド型のビジネスへの転換は簡単ではない。パートナー企業にとって最も重要な収益モデルが変わるからだ。

 クラウドサービスになるとシステム導入の考え方が変わるのにともなって、プロジェクトの在り方や導入後の保守サポートの対応が変わる。クラウドベンダーの収益計上が少額の売り上げを継続的に計上していくサブスクリプション型になるのと同様だ。

オンプレミスとクラウドとのビジネスの違い
オンプレミスとクラウドとのビジネスの違い
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 クラウドビジネスではユーザー企業1社から大量の売り上げを得るのではなく、数多くのユーザー企業から少額の売り上げを得ることが必要になる。そのためには、パートナー企業の営業スタイルやプロジェクトの組み方、必要な人員のスキルも変わっていく。パートナーにとってもオンプレミス中心からクラウド中心へビジネスを転換する負担は大きい。

 一方で大手のクラウドベンダーはパートナーを介した間接販売が中心だ。パートナーが「クラウドを売りたい」と思わなければ、売り上げは拡大しない。そこでオンプレミス前提で強力なビジネスを展開している大手クラウドベンダーは、パートナー戦略を大胆に刷新することでクラウドシフトを後押ししようとしている。

新技術を採用するパートナー優遇で、既存パートナーも動く

 その1社が日本IBMだ。同社は2023年7月から本格的に新たなパートナープログラム「IBM Partner Plus」を開始する。ISV(独立系ソフトウエアベンダー)を通じた新規顧客の獲得を明確に目指している。ISV各社の製品にIBMのAI(人工知能)サービス「IBM Watson」の音声認識機能などを組み込み、ユーザー企業に販売してもらう狙いだ。