寒冷な地域では屋根に積雪による荷重が加わる。こうした積雪荷重によって、太陽電池パネルが損傷するケースも生じている。
屋根に設置した太陽光発電システム(PVシステム)が、雪の重さで壊れるトラブルが各地で発生している。よくある壊れ方は、パネル横枠の変形だ。太陽電池素子を覆うガラスの脱落につながる〔写真1〕。
太陽電池パネルの支持部に加わる積雪荷重はJIS(日本工業規格)C8955で定める。これまでの積雪荷重は実際よりも小さかった。パネルを載せた屋根には雪止めを設置して、頻繁に雪下ろしをしないことが多い。にもかかわらず、雪が屋根から滑り落ちる前提で、積雪荷重を屋根勾配に応じて低減していたからだ。この低減を、2017年3月に改訂したJISC8955ではなくした。
それでもまだ、JISに見込まれていない荷重がある。パネルに積もった雪がガラス面を滑った際に、パネルの横枠を押す「sin荷重」だ〔図1〕。PVシステムの雪害に詳しい吉富電気(名古屋市)の吉富政宣社長は「パネルメーカーもsin荷重を考慮していないため、横枠が変形する」と説く。
多雪地域では近年、5400パスカルの荷重に耐えられることを実験で確認したパネルが多く使用されている。だが、雪の重さでガラスがたわんで太陽電池素子が損傷したり、ガラス自体が割れたりする例は珍しくない。
日本あんしん設備保全協会(東京都中央区)の藤村智宏理事長は、パネルメーカーが示す5400パスカルは信用できないとみる。「使われているガラスに相当する強度係数や厚さを、建築物向けに板硝子協会が作成している強度計算式に当てはめると、1400パスカル程度の許容耐力になるからだ」(藤村理事長)。
そのため藤村理事長は、「メーカーの指定よりもパネルの寸法を小さくする」「横枠の断面寸法を大きくする」「ガラスや横枠の強度不足を架台が負担する」といった方法で、ガラスや横枠の破損を防止するよう勧める。
「支持金具」を使ってパネルを瓦屋根に載せた住宅では、雪の重さで瓦が割れるトラブルが多発している。
支持金具は上下の瓦に挟み込むように施工する。そのため、金具が雪の重さで変形すると瓦にぶつかり、割ってしまうことがあるのだ。結果的に、大量の雪解け水が野地板に浸入し、漏水をもたらす場合もある〔図2〕。
一方、「同質支持瓦」と呼ぶパネルの支持部材は、荷重支持部を周囲の瓦に接しないよう取り付けるので、瓦を割るリスクを抑えられる〔写真2〕。