カナダのバンクーバーに完成間近の木造を多用した高層ビルだ。混構造ではあるものの、柱や床といった主要構造材に木を用いた。単純な構造を採用して、横展開が容易なビルに仕上げている。

 主要構造に木材を多用した18階建ての高層ビル「ブロックコモンズ」の建設が、終盤を迎えている〔写真1〕。主要構造に木材を利用したビルとして実現した高さ58.5mは、世界一の水準だ。カナダのバンクーバー市内にあるブリティッシュコロンビア大学(UBC)に建設中の学生寮で、2017年6月から供用を開始する。延べ面積 1万5115m2の学生寮では、約400人の学生が生活できる。

〔写真1〕木造で高層ビルを実現
〔写真1〕木造で高層ビルを実現
工事終盤に差し掛かったブロックコモンズの様子。東側から見る。柱や床に木材を用いていることが分かる。2016年8月に撮影(写真:KK Law、naturally : wood)
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 この事業は、カナダの天然資源省が13年に実施したコンペを経て進められている。「マスティンバー」と呼ぶ大型の木質材料を高層建築に活用するという要件で募集したコンペで、北米の森林資源の市場開拓とCO2(二酸化炭素)の固定による地球環境保全の狙いがある。

 建築設計はアクトン・オストリー・アーキテクツ、構造設計はFast+Eppが、それぞれ担当した。いずれもバンクーバーに拠点を置く事務所だ。さらに、欧州の高層木造建築の設計で実績を積み重ねてきたヘルマン・カウフマンZT社がアドバイザーの役割を担った。

 国が支援する事業という点からも分かるように、このプロジェクトでは汎用性が求められた。つまり、複製や応用が容易な建物を実現する必要があったのだ。