坂茂氏が設計を手掛けたスイス・チューリヒに立つ「タメディア新本社」。2013年に竣工した高層オフィスビルは、木造であることが分かりやすい珍しい建物だ。

 工事中からチューリヒ市民の関心を集めていたタメディア新本社が、2年半の工期を経て2013年夏に完成した。

 タメディア社はチューリヒに本社を置く総合メディア会社で、テレビやラジオ、新聞、雑誌などを手掛ける。創業は1893年。新本社は、チューリヒ中央駅の南側、歩いて10分ほどのシール川沿いに完成した。約7400m2の敷地にあった1棟の既存建物を解体して新築し、これと接する既存建物の上部に2層分を増築したものだ。

北東の角にあるエントランスを正面から見る。既存の社屋が左右後方に見える(写真:武藤 聖一)
北東の角にあるエントランスを正面から見る。既存の社屋が左右後方に見える(写真:武藤 聖一)
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 新本社ビルの特徴は、構造材に木材を用いていること。中2階を含めると7層が木造だ。新築した木造部と既存部とは、エレベーターなどが入るコンクリートコアを介してつながっているが、構造的には木造部だけで独立している。

 構造材はスプルースというマツ科の集成材で、接合部分にも金属部材を使用していない。接合部を楕円形状にすることで、がっちりと固定している。木のおもちゃを組み立てたかのようだ。

施工中の外観。街並みに合わせて建物のリズムやラインをそろえ、周囲になじむように配慮した(写真:SHIGERU BAN ARCHITECTS EUROPE)
施工中の外観。街並みに合わせて建物のリズムやラインをそろえ、周囲になじむように配慮した(写真:SHIGERU BAN ARCHITECTS EUROPE)
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