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破断していたタービン部品

 2708便が搭載していたエンジンは、米プラット&ホイットニー(Pratt&Whitney、以下P&W)製の「PW4090型」。低圧/高圧の2軸構造の圧縮機・タービンからなるターボファンエンジンで、前方から「ファン」、ローターを6段備える「低圧圧縮機」(LPC)、同11段の「高圧圧縮機」(HPC)、「燃焼室」、同2段の「高圧タービン」(HPT)、同7段の「低圧タービン」(LPT)という構成となっている(図2)。

図2 事故機が搭載していたターボファンエンジン
図2 事故機が搭載していたターボファンエンジン
米プラット&ホイットニー(Pratt&Whitney)製の「PW4090型」エンジン。ファン、6段の低圧圧縮機(LPC)、11段の高圧圧縮機(HPC)、燃焼室、2段の高圧タービン(HPT)、7段の低圧タービン(LPT)という構成となっている。燃焼室から後段の高温・高圧の燃焼ガスにさらされる領域を「ホットセクション」と呼ぶ。HPTの「ディスク」と呼ぶ部品の一部が破断し、火災を引き起こした。(報告書を基に日経ものづくりが作成)
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 結論から言うと、2段のHPTの前方側(第1段)のローターの一部が破断したことが事故の原因だった(図3)。HPTローターは、円盤状の「ディスク」と呼ぶ部品の外周上に数十枚の「ブレード(翼)」を取り付けたもので、このディスクの外周部が破断した。欠落したディスクの一部やそこに取り付けられていたブレードがエンジンの一部を破壊し、燃料・エンジンオイルの漏れと引火につながり、火災を起こしたのだ。

図3 事故機の高圧タービン(HPT)ディスク
図3 事故機の高圧タービン(HPT)ディスク
外周部のリムの間にブレードを固定する。事故機のHPTディスクは、リム部の一部が破断していた。欠損したリム部がエンジンの一部を破壊し、それによって漏洩した燃料やエンジンオイルに引火して火災となったと考えられる。 (出所:国土交通所)
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 その根拠となるのが、現場に残された数々の証拠だ。まず、破断したHPTディスクは、「リム」と呼ぶブレードを取り付ける箇所の一部が欠損した状態で残っており、欠損したリム部は、事故のあった滑走路34Rの周辺から見つかっている。ディスクの破断面と回収したリム部の破断面は、完全に一致していた。

 この他、事故機の第1エンジンでは、HPTを覆う「HPTケース」の一部が外に折れ曲がっていたり、排気管を固定するボルトの一部がなくなったりしていた。燃料とエンジンオイル間で熱交換を行うための「燃料滑油熱交換器」*2のケースには3箇所の亀裂が認められた。同熱交換器には外部から力が加わった痕跡が認められなかったことから、ケースの亀裂は、破断したHPTディスクのリム部がHPTケースを貫通した際の衝撃、および同ディスクの破断によってエンジンが急停止した際の衝撃によって生じたものと、運輸安全委員会では分析している。

*2 燃料滑油熱交換器 燃料とエンジンオイルとの間で熱交換させるための補機。燃料を温めて水分の凍結を防ぐとともにエンジンオイルを冷却する役割がある。