再開発が進む東京・渋谷で、銀座線のホームを130m移設する工事が佳境を迎えている。2018年5月の大型連休中に丸3日間、列車を運休して線路切り替え工事を実施。限られた空間で工夫を凝らした。
東京地下鉄(東京メトロ)は大型連休中の5月3日から5日にかけての丸3日間、銀座線の列車を区間運休して、線路切り替え工事を実施した。工事区間は渋谷駅構内から浅草方面にかけての延長約415m。2つある線路を左右に最大4.6m動かして間隔を広げるとともに、線路の高さを最大2m下げた(写真1)。
この工事は、銀座線の終点である渋谷駅のプラットホームを起点の浅草方面に130mほど移設するものだ(図1、2)。現在のホームは地上3階に当たる高架橋上にある。工事を発注する東京メトロ鉄道本部改良建設部第二工事事務所の白子慎介所長は、「1938年に開業した際、銀座線のホームが百貨店の建物に組み込まれる形で建設されたので、当社単独ではバリアフリー化の工事などを実施するのが難しかった」と、同駅の現状を説明する。
渋谷駅街区基盤整備方針が決まったのは2008年のこと。東京メトロは渋谷駅周辺の再開発に合わせて、翌09年から駅移設工事に着手した。14年時点の公表資料によると、総工費は290億円。このうち東京メトロは100億円を負担する。
現在の銀座線渋谷駅は乗車ホームと降車ホームが2つに分かれた相対式ホームだが、新たなホームは乗車と降車を区別しない島式ホームとし、幅も12mと現在よりも広くする。さらに、車庫へ続く2本の線路のうちの1本を行き止まりにすることで、ホームの端部に設ける銀座線の改札口からJR線の改札口までの間に、段差がない平たんな動線を確保する計画だ。
移設するホームの浅草側は、地下トンネルから地上に出てくる区間に当たり、従来は33‰(パーミル、1‰は1000分の1)の縦断勾配があった。ホームや分岐器を新たに設置するため、同区間の勾配を10‰と緩やかにすることも今回の線路切り替え工事の目的だ。