白い石畳の帯や照明柱の連なりで広場と道路をトータルデザイン
改修されたばかりの東京駅丸の内駅前広場に立ち、その広さに息をのんだ(写真1)。広場の先には、デザインで統一された広幅員の行幸通りが続く(写真2)。奥にうっすら見える皇居の緑へと空間がつながっているようだ──。
改修前は駅前広場を分断するように都道が通っていた(写真3)。東京都は都道の線形を変更して、駅舎の北と南に交通広場を再配置。駅舎正面の約6500m2のオープンスペースを含め、都と連携しながらJR東日本が一体整備した(図1)。
一方、行幸通りでは、2010年に先行改修した丸の内区間に続き、皇居外苑区間も整備。事業着手から約15年の歳月を経て、東京駅と皇居とをつなぐ軸線の改修がようやく完了した。
行幸通りのうち中央部分の馬車道は、改修前も今も車道の位置付けだ。以前はアスファルト舗装で公式行事などの活用にとどまっていたが、石張り舗装に改修して歩行空間として開放している(写真4、図2)。
プロジェクトの大きな特徴は、これら駅周辺エリアのトータルデザインを実現した点にある。皇居と12年に復元した赤レンガの丸の内駅舎とを結ぶ象徴的なエリアに、一体的な景観軸をいかにして創出するのかという点が問われた。
軸線を形成する要素の1つが舗装だ。白い御影石による石畳の帯で統一した。ただし、石のサイズは行幸通りと比べて、駅前広場では大判を採用している。舗装のデザインを担当した小野寺康都市設計事務所(東京都千代田区)の小野寺康代表は、「行幸通りから続く白い帯が、駅前広場で広がって最後にクライマックスを迎える。そのため強い素材感、高級感を与えたかった」と話す。
樹木の配置や照明柱のデザインにもこだわった。駅前広場では、行幸通りを貫くイチョウ並木の延長線上に、ケヤキを列植。並木の景観軸を通すには、イチョウに負けない大きめのケヤキが必要となる。そのため、土かぶりを確保できる植栽升を置き、ベンチとしての機能を持たせたデザインにした(写真5)。
鋳鉄製の照明柱の連なりも空間の一体感を高める。行幸通りはぼんぼりのような形状で情緒的なイメージとする一方、広場はにぎわいを感じさせる3灯式にした。照明デザインを担当したナグモデザイン事務所(東京都渋谷区)の南雲勝志代表は、「駅舎となじむ品格を持たせ、昔からこの場にあったと感じてもらえるような形を目指した」と話す。
「関係者の誰もがプライドやデザイナー生命をかけ、世界に誇れる一流の場所をつくろうと取り組んだ」(南雲代表)。元から、駅舎と皇居を結ぶ東京の「顔」と言える象徴的な空間だったが、車の利便性が優先されていた感は否めない。整備後は国内外の人がたたずみ、歩きたくなる空間に生まれ変わった。まさに、日本の「顔」へと躍進を遂げた。