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 私が日本TIの管理職になったとき(今から30年以上も前です)の新任管理者研修で、「HOW WE MEASURE YOU」と題された一枚の紙を手渡されました(図1)。「TIの管理者たる君は何によって評価されるか」と日本語で副題のついたこの文書は、日本TIの人事や営業担当の執行役員を務められた、故仲野英志氏が和訳をされたもので、氏の著書にも紹介されています。

図1 1980年代のTIの新任管理者研修での配布物の内容
図1 1980年代のTIの新任管理者研修での配布物の内容
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 私自身も、及ばないところが多々ありましたが、日本TIの多くの社員同様、この10項目に合致する精神と行動ができるように努力してきました。この指針は1980年頃、半導体業界や日本の経済が右肩上がりの時代にまとめられたもので、第2項の「君は進んでリスクをおかせるか」という言葉は、現代に当てはめると議論があるかもしれませんが、それ以外は現代でも十分通用する価値観であると思います。

 TIには創業以来連綿と受け継がれてきた企業文化があります。そしてそれは、創業者の一人であり、元会長でもあったパット・ハガティー(Patrick E.Haggerty:1914年3月17日生、1980年10月1日没)によってTIの経営理念としてゆるぎないものとされました。私自身は1981年の入社ですので、残念ながら彼の謦咳(けいがい)に直接触れることはできませんでしたが、彼が残した言葉をさまざまな場で学ぶことができました。彼の言葉の中に、「意欲ある社員が、無神経なリーダーによって、自分が働いている会社のために力を発揮できず、大志も果たせないとしたら、産業界にとってこれほどの損失はないであろう」という記述があります。コンプライアンスという言葉以上に組織のリーダーとして考えさせられる言葉です。

 彼はこのようにも言っています。「新しい技術や製品のアイデア、発明だけが革新ではない。新しく考え出したコンセプトを市場へ送り出し、利益を生み出す製品にするために必要なすべての仕事が革新のプロセスなのである」。この言葉は、「マーケティングとイノベーションが企業の2つの基本的な機能である」というドラッカーの考えに通じるものがあるように思います。ハガティーやTIの歴代経営者の言葉を含むTIの考え方は「TIの価値と倫理」という文書にまとめられ、以下のURLで一般に公開されています。

http://www.tij.co.jp/jp/lit/ml/jajw006a/jajw006a.pdf