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近年の大地震で重大な被害が発生したにもかかわらずあまり知られていないのが、体育館などでよく見られる鉄骨置き屋根構造の損傷だ。構造の研究者が、被害のメカニズムと対処方法について説く。(日経アーキテクチュア)

 2011年3月の東日本大震災では津波の被害であまり目立たなかったが、広い地域で鉄骨置き屋根構造と下部鉄筋コンクリート(RC)架構間の接合部・支承部に多くの損傷が発生し、アンカー定着部のコンクリート塊が落下するなどの被害が発生した〔写真1〕。また、そのために使用不能となり、避難所としての機能を果たせなかった建築物が多数生じた。

〔写真1〕鉄骨屋根のアンカー定着部の被害状況
〔写真1〕鉄骨屋根のアンカー定着部の被害状況
東日本大震災で鉄骨屋根と下部RC架構の接合部が損傷し、コンクリート塊の落下が相次いだ(写真:日本建築学会)
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 落下したコンクリート片には一抱えあるものもあり、体育館内の生徒に当たれば死傷しかねない大きさである。幸い今までに人的災害は報告されていないが、天井の落下と同様、放置してよいものではない。

 ここで「鉄骨置き屋根構造」とは、学校体育館やスポーツホールなど、トラス構造などで構成された鉄骨大スパン屋根が、屋根支持部まで立ち上がったRC構造の上に載った形式の構造で、特に接続部がベースプレートとアンカーボルトで構成された露出柱脚形式によるものを指す。鉄骨屋根は基本的に自己釣り合い系の構造となっていることが多いが、支持構造隅部に力を伝達する形式のものもある。

 同種の被害は阪神大震災でも報告されており、また東日本大震災では1990年以降に建設された新しい体育館でも同様の被害が数多く発生している。

 これは現行の構造設計基準および耐震診断・改修指針類がこの破壊形式に対応できていないことを意味している。具体的には地震時に鉄骨置き屋根構造の支承部・接合部に発生する部材力の評価、および支承部・接合部の設計・診断法が確立していないのである。