東日本大震災の発生時、震度5強の揺れで九段会館1階大ホールの天井が崩落。その事故のメカニズムが明らかになった。第三者委員会は7年にわたる調査の末、石こう飾り天井の施工法の特殊性に起因すると結論付けた。
天井がブランコのようにぶら下がり、壁のように迫ってきた──。九段会館ホールの天井落下事故の現場に居合わせた目撃者の多くが、事故調査委員会の聞き取り調査に、そう回答した。
2011年3月11日に発生した東日本大震災で九段会館1階大ホール(東京都千代田区)の天井が崩落した事故のメカニズムが18年2月に発表された調査報告で解明された。11年5月、九段会館を運営してきた日本遺族会の依頼で事故原因を究明する第三者委員会として、「九段会館ホール天井落下事故調査委員会」が発足。東京大学生産技術研究所の川口健一教授を委員長とする8人の委員でチームを編成した。委員らが疑問視したのは、「観客席側を向いていた天井仕上げ面が上を向いて落下していた」ことだ。
九段会館ホール天井落下事故調査委員会
- 川口健一:東京大学生産技術研究所教授(委員長)
- 木村 勉:長岡造形大学名誉教授
- 津村泰範:長岡造形大学准教授
- 大場康史:東京大学生産技術研究所元準博士研究員
- 中楚洋介:東京大学生産技術研究所助教
- 川崎香織:筑波大学大学院博士課程
- 岡 健司:文化財保存計画協会
- 上村一貴:長坂設計工舎
九段会館が竣工したのは1934年。地下1階・地上4階の鉄骨鉄筋コンクリート造だ〔写真1〕。設計は軍人会館建築事務所(意匠:川元良一、ホール音響:佐藤武夫、構造:田中正義)で、施工は清水組が請け負った。77年間にわたって無事だった天井は、なぜ震度5強の揺れに耐えられなかったのだろうか。