米国のインフラ点検市場の開拓に挑む日本人がいる。西日本高速道路会社が設立した現地法人、ネクスコ・ウエストUSAの松本正人社長だ。2017年に元請けとして初の点検業務を受注し、飛躍への足掛かりをつかんだ。国内で培った非破壊検査技術が、海外展開の強力な武器になる。日経コンストラクションがインタビューした内容をお届けする。
西日本高速グループが国内で培った非破壊検査技術を武器に、米国の点検市場に参入してから6年。2017年は節目の1年になりました。
バージニア州が発注した橋梁点検業務の受注に成功したのです。これまで下請けとして経験を積んできましたが、初めて当社が元請けになりました。しかも19橋分の床版を赤外線で点検するという先進的な内容で。
赤外線カメラでコンクリート構造物の表面温度を測定すると、健全部と異常部の温度履歴の違いで浮きや剥離を見つけられます。機材を車に取り付ければ、走行しながら調査できるので、交通規制が要りません。
床版にアスファルト舗装を施す日本では下面から点検しますが、コンクリートがむき出しの米国では、上面から点検できるのです。
実はこの業務には、米国連邦道路庁の予算が使われています。赤外線による点検の有効性を検証する目的があるのです。我々の点検結果を基にした研究リポートが、いずれ公表される予定です。今回の受注額は2万ドルほどですが、リポートを通じて技術の有効性が知れ渡り、100~200橋単位で発注してもらえるようになれば、収入源として当てにできると期待しています。