PR

仕事が遅い部下に悩まないリーダーなど、この世に存在しないだろう。そんな悩みを少しでも減らすための方策とは。

 製造業におけるスキル管理システム構築のプロジェクトリーダー、山本は顧客要求の取りまとめを、新しくチームに加わった森に任せた。森は以前、製造業の人事系システムの開発に長く関わってきた経験がある。その森を山本がプロジェクトに引き入れたのだ。山本は、森の過去の成果物が分かりやすいのを見て、その能力の高さに期待していた。

 しかしプロジェクトが始まってしばらくすると、山本は森の仕事ぶりに疑問を感じるようになった。森は毎晩遅くまでデスクに向かっており、時折休日出勤もしている。

 週次の進捗報告を重ねるうちに、進捗が思わしくないことが分かってきた。山本が追求すると、森は同じような作業を何度もやり直していることが分かった。手戻りが多発しているのだ。

 その後、作業の進め方について何度説明させても改善せず、森は「一生懸命やっています、進捗の遅れを発生させないように頑張っています」と繰り返し言うのみだった。

〈イラスト:小林 ちか子〉
〈イラスト:小林 ちか子〉

 これは、仕事が遅く、作業を抱え込んでしまう部下のケースである。チームで作業を進めるシステム開発プロジェクトにおいて、1人の部下の作業が遅れると、チームメンバーにも多大な迷惑がかかる。リーダーは、メンバーの特性をよく考慮して、仕事の任せ方や介入の仕方を工夫する必要がある。

 経験を見込まれてプロジェクトに入ったはずの森さんだが、山本さんの期待に反してその仕事ぶりは到底満足のいくものではなかった。夜遅くまで仕事をしても作業は終わらず、周りのメンバーに作業を依頼することもなく仕事を抱え込む。

 実は、森さんが以前のプロジェクトで評価の高い成果物を生み出せていたのは、ユーザーやリーダーからの的確かつ詳細な指示があったからだった。

工夫が苦手で段取りが悪い

 森さんのように、手順や段取りを的確に指示されれば精緻に仕事をこなす能力を発揮する一方で、自分で考えたり工夫したりしての作業は苦手という部下がいる。やるべき作業が細かく指示されていないと、途端に仕事の進みが遅くなる。

 仕事が遅い原因の1つに、段取りの悪さがある。システム開発においては、複数のタスクを1人のITエンジニアが担当するのは当たり前のことだ。例えば要件定義の工程なら、ユーザーのヒアリング、要求の分析、業務フローの作成など、様々な作業をこなす必要がある。

 複数あるタスクを整理して、作業の優先順位付けやスケジュール配分などを考慮し、自分の作業の段取りを決める必要がある。しかしこの段取りが悪いと、仕事がなかなか終わらず、手戻りが発生してさらに遅れるといった事態を招く。さらに、段取りができなければ、周りのメンバーに仕事を依頼することもままならない。結局、作業を自分一人で抱え込んでしまい、事態を悪化させている。

仕事が遅い部下の問題点
仕事が遅い部下の問題点
[画像のクリックで拡大表示]