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 コンセント電源を含めた「リアルZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」モデルハウスとなる「里山の平屋暮らし」〔写真1〕。建て主で施工者の柴木材店(茨城県下妻市)は、「従来より高価格帯の顧客層の獲得を目指したモデル」(同社の柴修一郎社長)と位置付ける。設計は伊礼智設計室が担当。温熱計算は東京大学大学院の前真之研究室に依頼し、計画時のシミュレーションから完成後の実測まで委ねた。

〔写真1〕南に正対して切妻屋根を配置
〔写真1〕南に正対して切妻屋根を配置
道路に面した南側外観。南に正対して建物を配置した。深さ1100mmの軒は、夏の室内温度が目標値以下の日射取得量に収まるよう設定した。切り妻屋根に8.7kWの太陽光発電パネルを搭載。屋上に設けた物見台からは、北側の山並みを望める。造園は荻野寿也景観設計(堺市)が手掛けた(写真:浅田 美浩)
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 設計の与条件は大きく2つあった。近年人気がある平屋建てとすることと、冷暖房・換気・給湯を一体化したシステムの導入だ。

南北に正対して建物を配置

 敷地は、日射負荷を制御しやすいように、南北に正対して建物を配置できる区画を選んだ。

 里山住宅博の分譲地は、コモンと呼ぶ共有緑地を住戸間に挿入しているのが特徴だ。この敷地はコモンに面していないが、「日本では道路がコモンスペースの役割を担ってきた。そこで、南側の道路に対するつながりと、山並みが見える北側の風景の取り込みを意識して設計した」(伊礼智氏)。

 南北に並べたリビングとダイニングには、引き込み式の高性能木製サッシを採用。障子を開くと、南の庭からリビング、ダイニング、北側のデッキへと視線が抜ける〔写真2〕。ロフトの上には北側を望む物見台を設けた。

〔写真2〕吹き抜けのダイニング
〔写真2〕吹き抜けのダイニング
北に面したダイニングまわり。吹き抜けを介してロフトと一体化する。建物の形状は平屋だが、物見台につながるロフトを設けたため建築基準法上は2階建ての扱いとなる。2枚建ての障子は、高性能木製サッシと同様に右側の壁に引き込める納まりとしている。壁と天井は自然素材のシラス塗り壁の仕上げ(写真:浅田 美浩)
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 外皮の断熱については、屋根に厚さ240mm、外壁に120mmのセルローズファイバーをそれぞれ施した。切り妻屋根は深い軒を設け、南側の奥行きは1100mmとした。

 「冬の寒さを考えた住宅の断熱化が一定レベルに達していれば、夏の暑さを勘案した屋根断熱と日射遮蔽の重要性が増す。この住宅では、夏の最高室温の目標値を定め、それを実現できる開口部の日射遮蔽のレベルを設定するなどした」と前准教授は話す〔写真34〕。

〔写真3〕南リビングも均一な温度
〔写真3〕南リビングも均一な温度
リビング。障子と木製サッシを引き込めば室内とテラスが一体化する。窓と障子を閉じると夏でも室内の温度は均一に(写真:浅田 美浩)
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赤外線サーモグラフィー画像(資料:前真之研究室)
赤外線サーモグラフィー画像(資料:前真之研究室)
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〔写真4〕部屋に応じたサッシを採用
〔写真4〕部屋に応じたサッシを採用
南に面した主寝室。木製サッシを用いたリビング・ダイニング以外の窓にはアルミ樹脂複合サッシを使用。主寝室では引き込み式の製品を用いてすっきりと納めた(写真:浅田 美浩)
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 設備面では、太陽熱とヒートポンプを併用して冷暖房と第1種熱交換換気、給湯を賄うOMソーラーの「OMX」を採用している。伊礼氏は、多数必要となるダクトをデッドスペースである天井裏に配置。ダクトで占められがちなロフトを有効活用できるようにした〔写真5〕。

〔写真5〕ダクトで吹き出す
〔写真5〕ダクトで吹き出す
ロフトの横に機械室を配置(写真奥)。オープンなリビングまわりには、左手前の円形の吹き出し口から空気を送る(写真:浅田 美浩)
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適材適所のダクト計画

 冷暖房と換気を一体化したシステムを装備し、ロフト横に設けた機械室から複数のダクトで床下と各室へ送風する。「ダクトの距離が長いとコストが高くなり摩擦によるロスも生じる。できるだけ短くしたい」(前准教授)。そこで、オープンなリビングまわりにはロフトに設けた円形の吹き出し口から空気を強く吹き出す方式を採用(写真下)。個室には個別にダクトを配管して均一な温熱環境を整えた。

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