里山住宅博inつくばの会場となった街区一帯は、建物や外構の景観協定を結んでいる。住宅の敷地間をつなぐ共有緑地「コモン」も2カ所設けた。
キーアーキテクツ(鎌倉市)が基本設計したK邸の外観は、アトリエの入る四角い箱をこの緑地に向けて張り出している〔写真1〕。「仕事場であるアトリエをコモン側に配し、共有空間を見守りながら仕事と子育てができるようにした」と同社の森みわ代表は話す。居住者全員で緑の環境を守り育てるという街区のコンセプトを実現していく仕掛けだ。
住宅博では地域の工務店がモデルハウスを建てて販売するが、K邸は計画の当初から建て主が決まっていた。建て主夫妻が住宅博の試みを知り、この街区に住みたいと考えた。自分たちで探した島田材木店(茨城県石岡市)を訪ね、住宅博への参加を依頼。さらに、キーアーキテクツに設計してもらえないかと相談した。そのため住宅博内の他のモデルハウスとは異なり、注文住宅として家づくりを進めた。
建物は総2階建て部分に4人家族の生活の場を納め、居間の先に斜交する形で、イラストレーターである建て主妻のアトリエを配置。アトリエの床は土間で仕上げ、隣に接する居間も床を350mm下げて土間とした。段差に腰かければ、ソファに座った人と目線が合う〔写真2、3〕。
高断熱のZEH
主寝室と2つの子ども室を並べた2階では、空気を逃すハイサイド窓を勾配天井の北面に設置。子ども室と居間の間には細長い吹き抜けを設け、明るさと空気が循環する経路を確保した〔写真4、5〕。
島田材木店はドイツ発の環境共生住宅づくりに取り組む団体「パッシブハウス・ジャパン」の加盟工務店で、同会の代表理事を務める森氏には、これまでも温熱コンサルティングを依頼した経験がある。今回は建て主の要望と予算を考慮し、パッシブハウス基準を満たす高性能住宅は目指していない。だが外皮平均熱貫流率UA値は0.28W/m2Kとし、HEAT20のG2グレードを上回る高い断熱性能を確保。屋根に6.0kWの太陽光発電設備を載せたZEHとした。
敷地は南北軸に対して45度振れている。温熱面で高性能な家を目指すには不利だが、「難しい条件に挑戦することで面白い味付けができるかもしれない」(森氏)と、この敷地を選んだ。当初案では南に1mの軒を出し、北は軒をなくし、できるだけ南向きにしていた。しかし街区の景観協定では建物の四周に軒が必要だったため、北側にも軒を設け、敷地に沿う配置とした。主な窓には日射遮蔽として外付けシェードを設けた。
冷暖房は、熱交換換気と一体化して、ダクトで各部屋に送る方式を採用した。換気の風量だけで冷暖房した空気を各室へ送るため、一般的なエアコンに比べて風量が小さい。「消費電力量が小さく、冷房時の除湿効果も高い」(島田材木店の島田恵一社長)のが利点だ。