通信以外の機能も盛り込む
通信アダプタの開発の中心になったのが情報開発部 情報第一課 課長代理の沢野貴夫(当時、開発第二部に所属)である。
沢野がまずやったのは、ファミコン・ソフトでメニュー画面を作ることだった。メニュー画面での情報選択法で多いのは、画面にメニューを表示し、その番号を選ぶ方法である。ただし、キーボードをもたないファミコンには合わないと沢野は考えた。
そこで、十字キーを押すとメニュー画面がスクロールし、スクロールを止めると欲しい情報が手に入る仕掛けを考えた。野村証券も賛成し、採用となった。
通信アダプタは、証券情報サービス以外にも展開できるよう、カートリッジを別に用意しアダプタに差し込む構造とした。証券情報サービス用ソフトはカートリッジに記憶させた。通信アダプタには、ネットワーク制御回路や漢字データを記憶したROMなどを搭載した(図2)。
この通信アダプタには、実際に使用しなかったLSIも搭載している。たとえば、セキュリティ強化のため、公開鍵暗号(暗号をかける鍵を公開し、暗号を解く鍵を非公開とする暗号方式)を処理するチップも搭載してある。
実際のサービスではパスワードでセキュリティの確保を図ったので、結果からみると不要だった。「当時、パソコン通信がいまほど盛んではなく、家庭とホスト・コンピュータを結ぶアダプタに必要な機能がみえていなかった」(沢野)ためだ。
プッシュ・トーン信号の発信および受信もできるようにした(図2のネットワーク制御回路で実現)。電話をしながらも、プッシュ信号で信号をやり取りできる仕組みとした。将来、通信アダプタを使ったゲームを開発するときに使えると踏んだからだ。