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日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第16回:ステップAT(自動変速機) 遊星歯車機構で変速、多段化と効率向上進む」の転載記事となります。

ステップAT(自動変速機)の特徴は、遊星歯車機構を重ねて配置することで6速以上の変速を実現している点。小型車で採用が多いCVT(無段変速機)と同様、燃費や効率を追求しているが、ロックアップ領域の拡大などでスポーティーな走りも実現している。

 ステップATは、多板クラッチの切り替え制御で自動変速する変速機のことで、乗用車向けでは最も一般的な変速機である。現在のATとほぼ同じ構造を最初に採用したのは、1939年に登場した米GM社のHydra-Maticで、北米市場での需要がATの開発を後押ししてきた。

 遊星歯車機構(サンギア・遊星キャリア・リングギアの3系統)を用いて、1系統の歯車への入力に対して、ほかの2系統の歯車のどちらかを固定、あるいは開放することで変速する。歯車機構と多板クラッチを組み合わせて、油圧で直接変速操作できる構造は、複雑だが完成度は高い。

 過去にはMT(手動変速機)と同様に、平行軸歯車によるトルク伝達を切り替える構造のステップATが、ホンダやドイツDaimler社で採用されていた(図1)。平行軸歯車方式は、歯車の損失は少ないが、多段化を進めるにはその分、歯車を組み込む必要があることから、現在は廃れてしまった。

図1 ホンダが「NSX」に搭載していたAT「ホンダマチック」
図1 ホンダが「NSX」に搭載していたAT「ホンダマチック」
平行軸歯車それぞれにクラッチを設け、変速時はクラッチの締結を切り替える構造。ギアの噛み合いによる損失は遊星歯車機構より低いなど優れた点もあるが、多段化には不利。現在は、遊星歯車式に置き換わったが、副変速機を組み合わせるなどして再登場する可能性もある。
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 エンジン本体がトルク特性や燃費性能を向上させたことから、トルクの増幅といった変速機本来の役割は相対的に低くなっている部分もあるが、変速機側も燃費や運転性能向上のための進化を続けている。

 車体側の改良による燃費改善効果も大きいが、今日のガソリンエンジン車の低燃費化はエンジンと変速機の両輪で実現されているのである。

 現在、2ペダルのATとして実用化されている変速機は、ステップATのほか、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、AMT(自動MT)、CVTがある。それぞれ構造上の特徴、利点、課題がある(表)。効率の面からいえばシンプルなMTこそ、最高の変速機であるが、実際の走行シーンや不特定多数の運転者が運転することを想定した場合、運転者の操作を受け入れる許容度の高さ、スムーズさにおいてはステップATにかなわない。それはDCTと比べても、まだ一日の長はある。

表 2ペダルATの種類と構造上の特徴
表 2ペダルATの種類と構造上の特徴
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 ステップATは主に、トルクコンバーターなどエンジンからの入力トルクを断続するクラッチ機構部、遊星歯車機構と多板クラッチによるギアトレーン機構部、変速やロックアップを制御するバルブボディーなどの制御部の三つに分けられる。