半導体材料などを製造するJSRと関西電力は設備点検にドローンを活用している。日本気象協会や日鉄ソリューションズは風や電波の調査に使う。空からのデジタル変革に挑む5つの事例を紹介しよう。
鉄鋼や石油化学などのプラントが立ち並び、不夜城のごとく稼働し続ける茨城県の鹿島臨海工業地帯の一角。プラントの配管に沿って、ドローンが「ブーン」という羽音を響かせながら飛行する。半導体材料や合成ゴムなどのメーカー、JSRが鹿島工場で試行しているプラント設備の点検作業だ。
鹿島工場は海岸から1キロメートルほどしか離れておらず、1年を通じて潮風が金属配管を直撃する。1~2年ごとの定期点検・修理は、プラントの操業を止めて配管周りに足場を組み、作業員が上って異常を目視確認する大がかりなもの。「足場の設置・撤去コストは比較的小規模な鹿島工場の点検でも1億円単位、他の大規模なプラントなら10億円単位の費用がかかる」(JSRの川崎弘一専務執行役員)。
そこで同社はドローンに目を付けた。定期的にドローンを飛ばして配管を撮影し、映像からサビの発生状況などを解析。さらには映像では見えない箇所を含め腐食の進み具合をAI(人工知能)で予測することを目指す。
開発中のAIに先行してドローンによる撮影を始めた。ドローンに撮影用のカメラを載せ、配管の表面温度を測定する赤外線カメラも装着。自動操縦で撮影し映像データをためている。
2020年度には映像データをAIに投入して分析を始める計画だ。「腐食の恐れがある箇所をドローンで絞り込み、足場を組む箇所を10分の1にできれば大幅な点検コスト削減につながる」と川崎専務執行役員は期待する。
山間部と発電所でも活躍
関西電力も設備点検にドローンを積極活用する1社だ。山間部などの高圧送電線の点検に使っている。送電線の上部に敷設した落雷からの保護用の「架空地線」に沿って、ドローンが鉄塔の間を自動飛行。架空地線の表面を撮影し落雷の痕を確認する。
従来は架空地線にまたがりモノレールのように走行する専用のロボットによって撮影し点検していた。この方法だと、作業員が鉄塔に上りロボットを設置・回収する必要があった。作業員のコストもかかった。