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 全国の自治体が取り組もうとしている新型コロナウイルス対策の前に、他でもない各自治体の定める個人情報保護ルールが「障壁」となって立ちはだかっている。2020年3月に始まった、都道府県が対話アプリ「LINE」を活用して個人に合った新型コロナウイルス関連の情報を提供するサービスのことだ。神奈川県からスタートし、全自治体での展開を予定していたが、自治体ごとに異なる個人情報保護ルールの影響で、実現したのは5月14日時点で24都道府県にとどまっている。

自治体のLINEアカウントで、個人に合ったコロナ情報を提供

 LINEを使った「新型コロナ対策パーソナルサポート」サービスは、自治体が設置した専用アカウントに自身の体調や年齢、既往歴、郵便番号などを入力すると、その人に合った新型コロナウイルス関連の情報を提供する。この際、個人が入力する「既往歴」などは、個人情報保護法が定める、特に慎重に扱うべき「要配慮個人情報」に相当する可能性がある。そのためサービス提供には運営主体である自治体のルールにのっとり、個人情報取り扱いの規約を定めたり、同意を取ったりする必要がある。

「新型コロナ対策パーソナルサポート」の画面
「新型コロナ対策パーソナルサポート」の画面
(出所:LINE)
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 3月5日、最初にサービスを始めたのが神奈川県だ。「神奈川県は個人情報保護関連の条例が厳しいことで知られる。ハードルの高いところに合わせて進めれば、ほかの都道府県へも横展開しやすいと当初は思った」。サービス開発を担当したLINEの江口清貴執行役員はそう振り返る。同様に他自治体のアカウントを開設する際、各自治体の条例に対応するとしても、1週間ほどで全47都道府県に展開できるとみていた。

 ところが、現実には他自治体への展開は思うように進まなかった。

 LINEが各自治体から条例を取り寄せて精査したところ「自治体によって、要配慮個人情報についての規定があるところもあれば、ないところもあった」(同)。規定があるところでは個人情報保護審査会などの審査が必要となるが、そのやり方も自治体ごとに異なっている。また、自治体でサービス運営を担うのは保健所担当の部署になるが「自治体の中には個人情報保護関連の担当部署が分かれているケースもあり、それぞれとやり取りをしながら解釈をすり合わせていくのに時間がかかった」(同)。

 さらに、このパーソナルサポートサービスの利用者データは、慶応義塾大学の研究グループが集約・分析し、新型コロナウイルスの感染拡大状況を調べたうえで、各都道府県の新型コロナ対策に活用している。自治体は分析のために、利用者データを第三者である慶応大へ提供するが、第三者提供について定めた条例もそれぞれの自治体で異なる。

 結局、4月9日までに24都道府県で自治体ごとのアカウントを開設したが、残る23府県では自治体ごとのアカウント開設を断念。23府県の居住者には神奈川県のアカウントを利用してもらうことになった。パーソナルサポートサービスでは、例えば発熱が続くなど高リスクの人に自治体の相談窓口の情報を案内するが、自治体の専用アカウントを持たない23府県の居住者は、自身が住む自治体の相談窓口がどこなのかを同サービスから知ることができない。