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本記事は、日経アーキテクチュアの2018年9月13日号に掲載した「フォーカス住宅」の記事を再編集したものです。

周囲に隣家が迫る狭小地で「明るく開放的な住まいを」という建て主の希望に応えた住宅だ。唯一、遮蔽物がない北東側に階高空間や大開口を設ける狙いで、中3階の階層を設定。居室の延長として計画された階段室が、屋内の隅々に外光や風を送り届ける装置として機能する。

 「上野桜木の家」は、桜並木の裏路地に立つ木造3階建ての住宅だ。間口2間半足らずの細長い敷地形状で、路地に面した北東側以外の3面に隣家が迫っている。こうした敷地条件にもかかわらず、中に入ると屋内はとても明るい〔写真1、2〕。玄関ドアを開くとすぐ前に階段があり、南西側2階のプレイルームと寝室、北東側中3階のリビング、南西側3階のダイニングがスキップフロアのように連続する(断面図参照)。

〔写真1〕高さ3m超のリビング大開口
〔写真1〕高さ3m超のリビング大開口
北東側中3階のリビング。リビングの天井は最高高さ約4.4m。大開口は幅2m、高さ3.2mで、階段手前の南西側にも光がふんだんに届く。カーテンはテキスタイルデザイナーの安東陽子氏がデザイン(写真:安川 千秋)
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〔写真2〕玄関ドア上部にも大開口
〔写真2〕玄関ドア上部にも大開口
北東側の外観。張り出したリビングの下が駐車スペース。多目的に使える空間だ。上方のクリアランスをゆったりと確保しているのは、玄関ドア上部に大きめの開口スペースを設ける狙いもあった(写真:安川 千秋)
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断面図
断面図
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 間仕切り壁や廊下をあえて設けず、階段だけで各居室をつなげた屋内は、外光や風が隅々まで届く。各居室の床面積を最大限に確保することにもつながっている。