接道部分の幅が2mしかないなど通常は悪条件とされる敷地で、隣地の豊かな緑に着眼。くの字に曲げた平面を採用し、敷地内の庭と敷地外の景色を両側から室内に取り込んで、明るく眺望の良い住空間をつくり出した。
立て込んだ住宅地の中、幅2mで接道する前面道路からは、住宅の外観の一部しか見えない〔写真1〕。しかし、一歩家の中に入ると、窓から木々の緑が見え、家中を風が抜ける開放的な空間が広がっている。細分化した庭と周辺の緑とを同時に取り込む「くの字」形のプランによって、良好な住空間を実現した。
この敷地を建て主に紹介したのは、不動産の仲介とコンサルタントを手掛ける建築家不動産(兵庫県西宮市)だ。複数の設計事務所が共同出資・運営しており、設計を手掛けた矢部達也建築設計事務所(大阪市)も参加している。
このエリアで土地を探していた建て主夫妻が、既に設計を依頼していた同事務所の矢部達也代表に相談。建築家不動産を介して、現在の敷地を見つけた。
接道部分は幅が約2mしかなく、敷地形状が多角形で周囲を既存の住宅に囲まれており、一般的な不動産の評価軸では悪条件とされる。しかし、敷地を初めて訪れたとき、矢部代表は「東側は木々が茂る擁壁と公園に面しており、豊かな借景と採光が期待できた〔写真2〕。北・西側は隣家が迫っているものの、隣家が後退している南側も採光が確保できる」と敷地を高く評価。建て主はひと目で購入を決めた。