全1924文字
PR
本記事は、日経アーキテクチュアの2017年6月22日号に掲載した「フォーカス住宅」の記事を再編集したものです。

接道部分の幅が2mしかないなど通常は悪条件とされる敷地で、隣地の豊かな緑に着眼。くの字に曲げた平面を採用し、敷地内の庭と敷地外の景色を両側から室内に取り込んで、明るく眺望の良い住空間をつくり出した。

1階ダイニング・キッチン。窓を開け放つことで、右手のテラス、左手の内庭と室内を一体的に使うことができる(写真:浅田 美浩)
1階ダイニング・キッチン。窓を開け放つことで、右手のテラス、左手の内庭と室内を一体的に使うことができる(写真:浅田 美浩)
[画像のクリックで拡大表示]

 立て込んだ住宅地の中、幅2mで接道する前面道路からは、住宅の外観の一部しか見えない〔写真1〕。しかし、一歩家の中に入ると、窓から木々の緑が見え、家中を風が抜ける開放的な空間が広がっている。細分化した庭と周辺の緑とを同時に取り込む「くの字」形のプランによって、良好な住空間を実現した。

〔写真1〕2m接道の敷地
〔写真1〕2m接道の敷地
前面道路から見る。前面道路との接道部分の幅は約2mだ。中央奥の白い屋根の住宅がクッテハウス(写真:浅田 美浩)
[画像のクリックで拡大表示]

 この敷地を建て主に紹介したのは、不動産の仲介とコンサルタントを手掛ける建築家不動産(兵庫県西宮市)だ。複数の設計事務所が共同出資・運営しており、設計を手掛けた矢部達也建築設計事務所(大阪市)も参加している。

 このエリアで土地を探していた建て主夫妻が、既に設計を依頼していた同事務所の矢部達也代表に相談。建築家不動産を介して、現在の敷地を見つけた。

 接道部分は幅が約2mしかなく、敷地形状が多角形で周囲を既存の住宅に囲まれており、一般的な不動産の評価軸では悪条件とされる。しかし、敷地を初めて訪れたとき、矢部代表は「東側は木々が茂る擁壁と公園に面しており、豊かな借景と採光が期待できた〔写真2〕。北・西側は隣家が迫っているものの、隣家が後退している南側も採光が確保できる」と敷地を高く評価。建て主はひと目で購入を決めた。

〔写真2〕緑に囲まれたテラス
〔写真2〕緑に囲まれたテラス
東側の擁壁上から見る。敷地東側は隣地の緑に面している。開口部は、内側からは片引き窓に見えるが、雨仕舞いの確保とコスト削減のため既成の引き違いサッシを採用した(写真:浅田 美浩)
[画像のクリックで拡大表示]
配置・1階平面図
配置・1階平面図
[画像のクリックで拡大表示]