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交流を生む玄関先のポーチ

 「賃貸の住人同士だけでなく、新旧の地域住民の交流を生む場をつくろうと考えた」。そう話すのは、ブルースタジオ専務取締役で、クリエイティブディレクターの大島芳彦氏。丸山アーバンから相談を受け、鵠ノ杜舎の企画・設計を手掛けた。

 大島氏が打ち出したキーワードは「街道コミュニケーション」。敷地の近くを通る旧東海道には、江戸時代に藤沢宿が置かれていた。宿場町では、町家に挟まれた街道を軸に人々の交流があった。そうした地域の歴史を設計に取り込んだ。

 2棟の住棟は、建物の真ん中を路地が貫く。“街道”に当たる路地は、共同住宅の中廊下を屋外化したものだ。そのため外見上は共同住宅よりも長屋に近い〔写真23〕。路地の中ほどは屋根付きの広場となっている。

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〔写真2〕誰でも通り抜けられる路地
〔写真2〕誰でも通り抜けられる路地
敷地の出入り口に門扉などはつくらず、近所の人たちも通り抜けられるように開放している。写真左手の掲示板は、近隣を含めた住民同士が情報を交換するために設置した(写真:安川 千秋)
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〔写真3〕路地や小道を挟んだ「1建築物」
〔写真3〕路地や小道を挟んだ「1建築物」
路地の中ほどは屋根付きの広場。脇に抜ける小道が分かれる。各住棟は、路地や小道によって4ブロックに分かれるが、路地の一部に架かる屋根で構造的につながった1建築物として設計されている。写真は2期の楓棟(写真:安川 千秋)
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 交流を促すカギとなるのが、路地と各住戸の玄関との間に設けたウッドデッキのポーチだ。現地を見ると、椅子を出していたり、サーフボードが置かれていたりと、それぞれのライフスタイルがにじみ出ている。

 「玄関が直接、路地に面していると各住戸は閉じてしまう。プライベートとパブリックの境界を曖昧にするポーチを挟むことで開かれ、交流のきっかけになる」(大島氏)。実際、ポーチの使い方を通じて互いを知り、日常的な付き合いが生まれているという。