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本記事は、日経アーキテクチュアの過去記事を再掲載したものです。記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 ソニータワー大阪や中銀カプセルタワーの保存をめぐり、設計者の黒川紀章氏が投げかけたメッセージについて、ドコモモジャパンの代表を務める鈴木博之・東京大学教授に話を聞いた。ドコモモジャパンは近代建築の保存問題などに取り組む団体で、中銀カプセルタワーの保存要望書も出している。

黒川氏が建て替え側の設計者である大江匡氏などに投げかけたメッセージについて、どのように受け止めたか。

 潔い批判の仕方で面白いと思った。黒川さんが本気だという姿勢はひしひしと伝わってくる。建物に命をかけているのだろう。一方、建物は建築家だけのものではなく、社会全体のプロジェクトだと大江匡さんが指摘している点はもっともだと思う。それでも、黒川さんの本気ぶりには圧倒された。

 ものを新たにつくるときに古いものと共生、共存することは非常に難しいのが実情だ。国立新美術館の建設に伴って取り壊されることになった歩兵第三連隊兵舎(当時の東京大学生産技術研究所)には、日本建築学会が保存要望を出していた。国立新美術館のプロジェクトを手がけることになった黒川さんが、自らの所属する団体から美術館を建設する敷地内にある建物に対して保存要望が出たことに、苦言を呈していたことを記憶している。最終的には国立新美術館の建設に当たって、建物をすべて取り壊すのではなく、一部を残す形で決着した。

 こうした議論が巻き起こった背景には、建物の寿命が短くなっている点がある。これまでは建物を建て替える際に、当初の設計者がすでに亡くなっている場合が多かった。建て替えまでの期間が短くなった結果、原設計者と新たな設計者との間にあつれきが生まれやすくなった点を、建築家は覚悟しなければならない。

ドコモモジャパンの代表を務める鈴木博之・東京大学教授は、「祖父や祖母と同じ風景を見たことがないような都市の景観のままで本当にいいのか、考え直す時期が訪れている」と主張している
ドコモモジャパンの代表を務める鈴木博之・東京大学教授は、「祖父や祖母と同じ風景を見たことがないような都市の景観のままで本当にいいのか、考え直す時期が訪れている」と主張している