伊仏合弁STMicroelectronics社は、ドイツ・ニュルンベルクで開催中のembedded world 2018(3月1日まで)において、無線通信SoC(無線通信マイコン)の新製品「STM32WB」を披露した(ニュースリリース)。同社のARM Cortex-M4Fベースの低消費電力志向マイコン「STM32L4シリーズ」(関連記事1関連記事2)をベースに開発したSoCである。

ブースでのデモンストレーション。二輪車のブレーキを操作すると、背中とヘルメットのLED(赤丸で囲んである)が光るという内容(写真左)。ヘルメット、Tシャツ、ハンドルの3カ所にSTM32WBが取り付けられていて(赤丸で囲んである)、Bluetoothで通信する(写真右)。ハンドルのチップを中心としたスター型で接続。日経 xTECHが撮影。
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ブースでのデモンストレーション。二輪車のブレーキを操作すると、背中とヘルメットのLED(赤丸で囲んである)が光るという内容(写真左)。ヘルメット、Tシャツ、ハンドルの3カ所にSTM32WBが取り付けられていて(赤丸で囲んである)、Bluetoothで通信する(写真右)。ハンドルのチップを中心としたスター型で接続。日経 xTECHが撮影。
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ブースでのデモンストレーション。二輪車のブレーキを操作すると、背中とヘルメットのLED(赤丸で囲んである)が光るという内容(写真左)。ヘルメット、Tシャツ、ハンドルの3カ所にSTM32WBが取り付けられていて(赤丸で囲んである)、Bluetoothで通信する(写真右)。ハンドルのチップを中心としたスター型で接続。日経 xTECHが撮影。

 無線通信向けのRF回路を混載したマイコン(無線通信マイコン)は複数の半導体メーカーから市販されているが、STMicroelectronicsのLaurent Vera氏(EMEA Microcontroller Marketing Director)とHakim Jaafar氏(MMS Group, Microcontrollers Division, STM32 Ultra-low-power & RF Marketing Manager)によれば、競合製品と比べて新製品には複数の特徴があるという。第1は、ARM Cortex-M4FとARM Cortex-M0+の2コア構成を採ることである。無線通信のプロトコルスタック処理はCortex-M0+が担うため、リッチなアプリケーションをCortex-M4F上で稼働できる。「競合製品では処理能力が高くないCortex-Mコア1つですべてを処理している例がある。これではアプリケーション処理に力不足だ」(Vera氏)。

STM32WBの概要。STMicroelectronicsのスライド
STM32WBの概要。STMicroelectronicsのスライド
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 第2は、Bluetooth向けとIEEE 802.15.4(ZigBeeやThreadなど)向けの2つのモデムを備えており、2.4GHz通信向けのRF回路を時分割で使うことで、BluetoothとIEEE 802.15.4通信を実質的に同時に行うことを可能にした。競合製品では複数種類の2.4GHz無線通信を扱えるが、同時に扱えるのは1つというケースがあるという。

無線通信サブシステムを独立させている。STMicroelectronicsのスライド
無線通信サブシステムを独立させている。STMicroelectronicsのスライド
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 第3は、暗号鍵を収める専用のメモリーを備えていることだ。「競合はチップ全体で共有するフラッシュメモリーに暗号鍵を格納していることがある。セキュリティーが低い」(Jaafar氏)。一方、今回の新製品であるSTM32WBの場合、RF回路やモデム処理を担うCortex-M0+などからなる無線通信サブシステムは、アプリケーション処理を担うCortex-M4Fからは完全に独立している上、暗号鍵を収める専用メモリーは無線通信サブシステム側にあり、高いセキュリティーを持つという。